事の発端は、他でもない私自身。何よりも鯖の竜田揚げ定食を楽しみにしていた私が食堂へと入ると、いつにもましてざわざわと騒がしくなったのだ。
『噂になってるみたいですね。投稿者に会いに行ったこと』
明らかに視線を感じていた時だ。後ろ――つまり、食堂の一番奥の席から知った声が聞こえて思わず振り返る。
『上層部では結構揉めてるとか。信頼問題に関わると、最悪な場合の話も上がってるようですよ』
一足先に定食を食べていた右京は、そう言って竜田揚げに齧り付いていた。
『おっきな口……』
『あの、人の話聞いてます?』
『勝手な想像なんですけど、もっと上品に食べるのかと思ってました。ナイフとフォーク使ってる方が違和感ないというか』
『生憎、日本生まれの日本育ちなので』
『でも英語できるんですよね?』
『人並み以下には』
そこは以上ではないのねと、彼に背を向ける形で席に座ると、『それで? どう収拾つけるおつもりですか』と聞かれたので、素直に答えた。
『後悔はしていません』
『多少なり反省するべきでは?』
『勿論反省はしていますよ。でも、行ってよかったと思えたので』
『ルールを破ってでも? 他人に迷惑をかけてでも? 信頼関係がそのたった一度の行動で消えてしまっても?』
畳み掛けるようでいて、どこか心配そうな音にも聞こえるその声に、私はただ『はい』と答えた。
背中からは、呆れた様子で『馬鹿なんじゃないですか』と聞こえた。それにはただ、『はい。馬鹿です』と笑って答えた。



