「……右京さん?」
「僕以外の誰に見えるんですかあなたには」
「いえ……あ。もしかして、野田さんとお約束を?」
「そんな約束死んでも断ります」
苛立っている様子にハッと思い出す。そういえば、以前の謝礼をし損ねていたと。
「どこで誰と何をしようとあなたの勝手ですが、流石にこの時間に一人で帰るのはどうかと思います」
「それを気にして、野田さんがタクシーを呼んでくださったみたいで」
「タクシーも安全だとは限りませんが」
「た、確かに、そうですね」
しかし、彼の言うとおり時間が時間だ。お礼は、もしかしたらまた日を改めた方がいいかもしれない。彼の機嫌的な意味でも。
「送ります」
「え。で、でも」
「送ります」
「は、はい」
梃子でも動きそうにない彼に、タクシーは断念することに。
前払いしてくれていた野田には、後日改めて謝罪をしておくことにした。



