青い青い空


「野田さん」

「ん?」

「ありがとうございます。野田さんがお父さんだったらいいのにな」

「俺も、お前みたいな立派な娘を持てたら幸せもんだ」


「が、残念なことにお前にそう言ってもらえるほど俺も出来た大人じゃねえんだなこれが」と、彼はへにゃりと笑いながらカウンターテーブルにそのまま突っ伏した。


「感謝してもらったところ悪ぃんだが、足腰立たねえんだわ」

「どう考えても飲み過ぎですよ」

「送ってやれねえけど、タクシーは呼んどいたから」

「いつの間に? というかそのタクシーは野田さんが使ってください。私なら大丈夫ですから」

「ダメだ。お前を一人になんかさせられるか」

「お気持ちは十分届いて」

「俺が一石に怒られる」

「それは、ちょっと否定しきれないです……」


 結局押し切られ、外で待っているというタクシーに乗って帰宅することに。世話になったのはこちらだというのに、代金はもう払っているとのこと。スマートすぎるにも程がある。


「えーっと、タクシータクシー……」

「お疲れ様です」


 路上を見ていた私の耳に届いたのは、どこかで聞いたことのあるような声。

 振り返ってみると、店先に眼鏡を掛けた男性が立っていた。