耳元から聞こえるのは、低く怒りの滲んだ声。
「君はそれで守ってるつもりかもしれないけど、星たちは動き始めている。勿論君は、それを知らないだろうが」
「……一体、何を仰っているんですか」
「僕も今の君と同じく見守ってきた側だ。でもね、見守っているだけでも情って湧いてくるもんなんだよ、人間っていうのはさ。こう何度も繰り返していれば尚のこと」
――だからもう、見守るだけじゃ物足りない。
「部下に手を出すおつもりですか」
「僕はもう出してるつもりだよ。流石にそこまでの報告は上がってないかな」
「色恋にまで口を出すほど無粋じゃないですよ」
「龍青亡き今、あわよくばと思っている奴は、君が知らないだけで何人もいる」
「…………」
「ここまでけしかけられても何も思わないというなら、いつまでも龍青に囚われたままでいればいい」
――その方が僕としても有り難い。
そう言って了安は、封筒を押し付けた後、笑顔でその場から立ち去っていった。
「……龍青に囚われたまま、か……」
一人取り残された俺の呟きは、誰に聞かれることなく、苦いインスタントコーヒーと一緒に飲み込まれて、なくなった。



