そうして両手を打った私は、手に持っていた缶コーヒーを、そっと彼の前に差し出した。
「もしよろしければどうぞ。お嫌いでなければ」
「……嫌いでは、ありませんが」
存分に「何故?」と訝しむ彼に、流石にただ押し間違えたからと本当のことを言うのは憚られたので。
「先程のお詫びです。ちょっと、ご迷惑をおかけしてしまったので」
それでは失礼しますと一礼をしたあと、今度黒瀬に返すコーヒー代の小銭を用意しながら、私はさっさとその場を後にしようとした。
「……――に」
けれど、何かを言われたような気がして慌てて振り返る。案の定、先程の彼がこちらをじっと見ていた。
「えっと?」
「色に、お気を付けください」
「色?」
「そう出ています。あなたの場合そのままの意味で」
それだけ言い終えると「これ、ありがとうございました」と、その人は一礼してこの場を去って行った。
まさか、お礼を言われると思っていなくて、思わず呆気にとられていたのも束の間のこと。
「あ。もしかしなくとも、さっきの人が黒瀬ちゃんの捜していた占い師さんなのでは……」
それに気が付いたのは、彼の姿が見えなくなった後だった。



