『――決して虹を追いかけてはいけないよ。追いかけたら最後、もうこの世へは戻ってこられなくなるからね』
この地は代々、水神様に守られてきた。
日照りが続けば“白”を呼び、やさしい雨を降らせ。洪水が起これば“黒”を呼び、雷を起こしてその危険を知らせた。
雨が上がった後、どうして虹が出るのか――それは、神様がその力をお使いになった後、天へと帰っていかれたからさ。
虹は、神様が通った跡。この地を守る、九つの頭を持った雨と水を司る神様の、天へと続く道標。だから、虹の根元にあるのは、決して宝物でも幸福でもない。
そこにあるのは、あの世の世界。
たどり着いた者はもう二度と、この世には戻って来られない。
“――ううん。ただ、九色の虹の根元には何があるのかなって”
以前、黒瀬が言っていたことを思い出す。
夫人の話がその全てであり、それが答えだった。



