とっぷりと暮れた頃。長時間の道を休みなく運転し続けてくれた了安と共に、私は田舎町のとある屋敷へと赴いていた。
郵便局で話を聞いたものの、残念ながら封筒に書かれていた住所は空き家。勿論『藍星 良介』なんて人物はおらず途方に暮れていたところ、この町のことならなんでも知っているという方を紹介していただいた。
大地主というだけあって、大きく立派な佇まいに気後れしていたのは、ほんの一瞬。何故か懐かしさを感じて首を傾げる。
「なんか、ここ……」
「伊代クン?」
「あ。す、すみません」
敷地内には人っ子一人見当たらない。
意を決し、夜分遅くにすみませんと引き戸を開けて声を掛けた。すると奥の方から、一人の高齢の女性が現れる。
「都会のもんは礼儀知らずね。それとも恥知らずね」
「すっ、すみません」
「ご夫人、よく僕たちが都会から来たとおわかりになりましたね」
「ちいさい町や。知らんもんはおらん。隼よりもはよ噂は広がるが」
「……?」
「つまり、僕たちがこの町に来た時点で、何しに来たのか知ってるってことじゃないかな」
それなら話が早いと、前のめりになってその女性に尋ねた。
こちらに、長部 龍生さんはいらっしゃいませんか――と。



