考えてみれば、生前に誰かに頼んでいればそんなことも容易いだろう。頼む相手がいなくとも、日付指定の郵便物など、ひと昔前ならさておき現代の技術では造作もない。
まだ冷静になりきれてはいなかったのだと、そっと手元に視線を落とす。
「残念だけど、僕や柳一、佐裕子、龍ノ平クンは、実際にこの目で彼が空へ旅立っていったのを見ていたよ」
落ちた視線の先で、無意識に指先がぎゅうっと握り込まれた。
「もし龍青が生きていたらどうするつもりだったの」
「……何か、話ができればいいなと思っていました」
「どうしてあんな話を遺していったのかとか?」
「主には」
「他には?」
「内緒です。古葉さんにしか話せないので」
すみませんと小さく謝ると、隣からはふっとやさしく微笑む空気が伝わってくる。
「これだけ口説いても落ちないわけだ」
嬉しそうな声に思わず視線を上げると、彼は発した音の通り、とても幸せそうに相好を崩していた。
「封筒の住所へ行く前に、この判が押された郵便局を見ていってもいいかな」
「は、はい」
「まだまだかかるから、ゆっくりしてて」
「ありがとう、ございます」
どうして彼がそんな風に笑いかけてくれるのか。どうして胸が切なくなるのか。
私には、その理由はわからなかった。



