聞き返した言葉をそのまま了承と受け取ったのか。突っ伏すように片腕をハンドルに預け、そのまま額を付けた。
「先生?」
「セクハラで訴えたら泣くから」
クイッと、体が少しだけ左側に引き寄せられる。シャツの袖を摘ままれたから。
「あの……?」
「今、一瞬君がいなくなるような気がした」
切なげに揺れる声。気付けば、彼の瞳がこちらを不安そうに見つめていた。
「いなくなったりするわけないじゃないですか。そもそも行く当てなんてないですし、貯金だってカツカツですし」
「…………」
「どこにも行きませんよ。私が出不精なの、よくご存じでしょう?」
「それもそうだね」
「それで納得されるのもちょっと複雑なんですが」
「逃げ出したくなったら、いつでも僕が囲ってあげるよ」
どうしてそうなるんですかと、二人でああだこうだと冗談を言い合う。……元気になったみたいで、よかった。



