「あん? 若造が、年上に舐めた口ききやがって。どこの所属だこら」
「く、黒瀬ちゃん、どうどう」
さっきまであんなに嬉しそうだったのに。なんだかんだと、占い師が見つからなかったことを根に持っているらしい。
すみませんでしたと一言謝り自販機の前を譲ると、その若い男性は、私がさっき間違って買ってしまった缶コーヒーのボタンをぽちりと押した。
「何か」
「あ。えっと」
じっと見ていたことがバレてしまい、さて何と言い訳をしたものかと考えていた時だった。ビル中に『くろせえええーッ!!』と怒鳴り声が響いたのは。
「へっ、編集長?!」
『どこをほっつき回っとるか! さっさと戻って来んかあー!』
「へっ、へいっ! ただいま黒瀬戻りまあーすっ!」
『打ち合わせに一秒でも遅れてみろ! 今度こそ本気でクビにするからな!』
「それだけはご勘弁をぉおぉおー!!」と、社内放送に大きな声で返事をした黒瀬は、先程まであれだけ全力疾走していた疲れなど全く見せないまま、超特急でこの場を後にした。
「終始うるさい方ですね」
「あはは。すみません。でも悪い子ではないので」
「存分に周りへ迷惑をかけていても悪くはないと」
「それについては弁明する余地もなく」
すまない黒瀬ちゃん……と心の中で謝っていると、「それで? 何ですか」と男性から声がかかる。
先程の大声に記憶を吹き飛ばされた私が、苦笑とともに何でしたっけと聞き返すと、男性からは大きなため息が落ちる。
「何かを言いかけられていたので」
「……? ああ! そうでしたね」



