笑顔に雰囲気、そしてトーンの高い明るい声。
「君にとってそれは三種の神器で、きっといろんな人の心の扉を開いてきたのだろう。無意識だろうけど、相手の警戒心を解くのが。人との距離を詰めるのが上手なんだよ。一方的にね」
扉は、君を中心に内から外には容易く開く。けれど、その外側から内側には、絶対に開いてはくれない。
そう言い切る彼に、私は慌てて首を振った。
「違いますよ。私はただの、愛想がいいだけの人見知りで」
「でも君はやさしいから、何度も扉をノックすれば君の方から開けてくれる。たとえ愛想がいいだけの人見知りでもね」
頭の回転が悪いからなのか。それとも彼が作家で、想像力が豊かだからなのか。彼の謂わんとしていることがきっと、半分も理解できていない。
苦しんでいるのがバレたのか、隣で笑う気配がする。
「単純な話なんだよ。ただ僕が、君に心を開いてもらいたくて、いろいろできない振りをしたってだけ。構っていたら、いやでも僕に時間を割いてくれるだろう?」
「え?」
「それから、君に同じ思いを繰り返して欲しくなかったから」
「同じ思いって?」
けれど彼は、それ以上は言わないまま、ただやさしく微笑んで濁すだけ。
「それが、君が新しく担当になると聞かされた時に、僕が自分の中で勝手に決めたこと。君は、仕事とプライベートの切り替えが、あまり上手い方ではないと思ったからね」
やはり仕事柄、人を観察する能力が優れているのだろう。図星を突かれたことだけでなく、私自身の知らないところまで見つけてしまうとは。もう、流石としか言いようがない。



