失礼すぎるにも程が有る素っ頓狂な声を上げた私に、ただ彼は小さく笑いながら「まあまずはそれでも飲んで」と、持参してくれたお茶へ促す。
流石に、一昨日の今日でそうすぐに頭は切り替わらなかった。
「大丈夫だよ。毒なんて入っていない。媚薬は入ってるかもしれないけど」
「そう言って飲む人がいるんですか」
「僕のファンなら毒でも飲むだろうねえ」
「熱狂的にもほどがありませんか」
ハネムーン中の花嫁(?)に白い目を向け続けられても、彼は楽しそうに笑うだけ。躊躇うことなく水筒のお茶を飲む私に、嬉しそうに微笑むだけ。
「君が龍ノ平クンと初めて僕のところへ来た日のこと。今でもはっきりと覚えているよ」
そしてゆっくりと、言葉を落とした。
「これまた、面倒くさそうな子を連れてきてくれたもんだってね」
当時のことを振り返ってみる。小さな失敗はあったかもしれないが、そこまでの酷い言われようをされるほどの失礼があった覚えはなかった。
「ぱっと見の笑顔とやさしい雰囲気、それから明るい声の調子。それが君にとって、人との間に築く壁なんだということは、しばらく見ていたらすぐにわかった」
「壁なんて。私はただ」
「そうだね。壁と言うよりは、扉かもしれないね」
「扉?」



