がくがくと膝を震わせる私に大爆笑を捧げた黒瀬は、「ごめんごめん、あたしが悪かった」と、近くにある自販機を指差す。
「何がいい? 振り回しちゃったお詫び」
「んー、緑茶か。でもスポーツ飲料とかでもよさそう」
「何でもいいよー。次はもうちょっと早めに誘うね」
「ねえ黒瀬ちゃん。あんまり反省してないでしょ」
「最後の方はただ走ってたんだよねー。青崎ちゃん、どこまでも付き合ってくれるからー」
「まさかの全然反省してない」
加えてそこまで純粋な笑顔を向けられてしまっては、五つも年上の私は流石に怒るに怒れなかった。
これではただ休憩時間にマラソンしただけじゃないかと、苦笑を浮かべながら遠慮なくスポーツ飲料のボタンを押そうとした時だった。後ろから「すみません」と、どこか苛立った様子で声をかけられたのは。おかげで、飲めもしない缶コーヒーを押してしまった。
少し恨めがましく振り返ったそこに立っていたのは、少年の面影が残る、眼鏡を掛けた若い男性。全体的に色素が薄く、どこか儚げな印象だった。
「後ろがつかえているんですけど。どれだけ待たせるおつもりですか。さっさと決めてください。決められないなら替わってください」
前言撤回。はっきり容赦ないこの人。



