「恐らく、資料が不足していますね」
「な、なぜ……?」
再び猛ダッシュで海外部署まで帰ってくると、何故か右京が、持ってきた資料とパソコンを見比べていた。
「いつまでも居座られるとこちらも迷惑なので」
「野田さん、他に借りられるパソコンは」
「右京のが一番早く終わるぞ」
(それ、もしかしなくとも持ち主の力も込みなのでは)
「なので、パソコンと睨み合うよりは足りない資料を探す方に時間を割いた方がよさそうですよ」
「え。でも……」
手元に帰ってきた資料はこれで全部のはず。また先輩のミスを臭わす発言をしてしまえば、再び部署内に怒号が飛び交ってしまうだろう。
(……そうか、わざとだ)
これは、ただの嫌がらせ。編集長のお気に入りは、全く仕事ができないと報告を上げるためだけの。
初めから資料は足りなかった。それをわかっていて作らせた。でないと、そもそも数字が合う合わないなんてわかるはずもない。彼の手元にはもう、きちんと出来上がった書類があるのだろう。
「……? ……きさ……」
どれだけ頑張ったところで、欠陥のある人間にはいつか綻びができてくる。
全員に認められたいとは思わない。けれど、認められたいと思う人たちに、迷惑はかけたくなかったのに。



