引ったくるようにして奪っていった資料に軽く目を通した後、必要なものを大方把握したらしい彼が呼んだ名前に心当たりがなく首を傾げた。
「馬鹿は余計なんですけど」
(あ……)
右京と名前を呼ばれたのは、以前自販機の前で出会った眼鏡の男性。占いをしてくれた人だった。
「すみません右京さん。少しの間、お借りすることは可能でしょうか」
「……どうぞ。ご自由に」
お邪魔してすみません、と軽くお辞儀をしたあと、オンラインゲームで培ったタイピング能力を生かしながら、部署全体に目を配る。
「ウチの部署なら割と手が空いてるぞ」
「お気持ちだけ。元はと言えば私が全部悪いので」
心にゆとりがあるおかげか、部署内は応援の気配が膨らむ。それだけで十分、今の私にはエネルギーだ。
「本当にお手伝いしなくても?」
「はい。構成はもうできているので、あとはそこに文章を打ち込めば……」
そして野田の元を訪れたもう一つの理由は、今このビルの中で最新のパソコンが取り揃えられているのが、他でもない海外部署だったから。わざわざ印刷室に行かなくても、この部署内でプリントアウトまで済ませることができる。しかもハイクオリティーに。
「同系色が重なっているので、色味はこちらの方がよりわかりやすいかと」
「え。あ、ありがとうございます。そうさせていただきますね」



