バタンと閉めた扉越しに、下品な嗤い声が響いてくる。
「ブハッ! 出て行きやがった。守ってくれる人がいねえと仕事もできねえのかよ」
「ふん。いい気味。これで少しは、自分がどれだけ甘やかされてるかわかるでしょ」
(聞こえてるし。そんなこと、わざわざしてくれなくてもわかってる)
けれど、文句ばかり言ってはいられない。時間が迫っている中、私の失敗のせいで彼らに――編集長に、責任を負わせるわけにはいかないのだ。
「――野田さん!」
「うおああっ?!」
「すみません、驚かせるつもりは……」
「き、気にするな」
海外支部長――野田 柳一 。
スーツの上からでも十分見てわかるほどの筋肉質の大きな体は、まるでラガーマン。以前ぽっちゃり体型を気にしていると言ったら「お前がぽっちゃりだあ?」と肩車され、まさかのそのまま社内を一周されたことがある。あれ以来、体重のことは彼の前では決して口に出さないようにと厳重に注意を払っていた。
恥ずかしいことこの上なかったが、なんだかんだと気にかけてくれる父親のようなあたたかい人。それが、私にとっての『野田 柳一』という人だ。



