いつもなら、ここで適当に濁すのが彼のやり方だ。でも今日は珍しく、曖昧に濁すどころかそんな風にはっきりと言ってくる。いつもとは違う返しに、少なからず動揺はした。
「え。そうなの?」
「んーまあ」
「年下は対象外なんだろ?」
(ああ、そういうことね)
どうよ。三十二にもなろうというのに、この敏感すぎる乙女心。
「んでもって十以上の年上がいいんだろ。手玉にとってるって聞いたぞ」
「手玉にとられてるの間違いだからねそれ」
「勧めといてなんだけど、ちょっと安心したわ」
「黒瀬さん。ちょっと表に出ようか。ん?」
「でも青崎ちゃんも久賀野も、これ以上ないほどいい人なのにぃ」と、ループが始まる。ここで絆されて、べろべろの彼女を久賀野が介抱してやるのがいつもの流れだ。時間もいい頃合いだし、そろそろお開きかな。
「黒瀬ちゃん。久賀野くん」
「ん?」
「なあに? 青崎ちゃん」
だから、その前にちゃんと言っておかないと。
「今日、飲みに誘ってくれてありがとう」
――一石さん。一つ、聞いてもいいですか。
「二人がいてくれて、よかったよ」
――どうして私は、選考の手伝いに選ばれたのでしょうか。



