もう一回言って

俺って意外に消極的?、といたずらっぽく笑う先輩に顔がほころぶ。
「本当は…好きな子としかキスをしたくなかったから。ってだけだけどね。未桜としたのがファーストキスだよ。本気で好きになった女の子は未桜だけ。覚えといてね」
軽くウインクをして、俺はこれで~とゆっくり歩いて図書室を出て行った。
一年前の振られたあの日の先輩の後ろ姿となんとなくつながった。
不思議だ、今度は振ったのは逆だというのに。
先輩の背中に向かって深くお辞儀をした。

ありがとうございます、先輩。私に、”恋”を教えてくれて。本気で先輩のこと好きでした―。

とは言えなかった。その代わり、これまでの感謝と本音を伝えることができて嬉しかった。
この光景を涼ちゃんに全て”見られていた”なんて思いもしなかったけど―。


私が家に帰ると、とっくに部活は終わって涼ちゃんも帰ってるはずの時間なのに部屋は暗く、人がいる気配がしない。
「涼ちゃん…?どこ?涼ちゃん!」
嫌な予感がして、洗面所、トイレ、寝室などをくまなく探したけど、涼ちゃんの姿はどこにもなかった。
隣の…自分の家に忘れ物があって帰ったとか?
…違う、そんなわけない。帰るときに涼ちゃんの家の前を通ったけど、今日の朝と特に変わってる様子もないし明かりがついてる感じもしなかった。
どうしよう…涼ちゃんに何かあったのかな?
とりあえず、電話!
ルルルルルル…
ダメだ、出ない。
他に涼ちゃんの友達って誰?
部活仲間の人?
あ、一人だけ涼ちゃんの陸上の試合を観に行ったときに仲良くなって連絡先を交換した人がいる!