もう一回言って

疑問に思いながらも、『そんなわけないだろ。未桜にも言うなよ』と言って席に着いた。
あの時は未桜に俺が本気だと噂で耳にしたらどうしようか、ということしか考えていなかった。

―…い
―先輩
「旭先輩!」
あ…。
ここは、未桜の家…そうか。俺…いつから気を失…寝てたんだろ。
まぶたが重い…。最近寝不足だったせいか。
「夕飯、できましたよ?」
未桜が心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
近いって…。ホント、俺があと数センチ前に出たら唇くっついちゃうよ?
はあ。と心の中でため息をついて未桜から距離をとる。
「ありがとう」
「…パエリアだから。口に合うかわかんねぇけど」
俺に一切目線を向けずに言われる。
「涼ちゃんはすっごく料理上手なんですよ!私が全然できないかわりに、涼ちゃんがご飯を作ってくれるんです」
自分のことじゃないのに自慢げに言う未桜。
そうなんだ。すごいね、と口で言いつつも内心は黒崎への嫉妬で真っ黒だ。
俺だって、一人暮らしが長いから家事全般は基本的にはできるつもりだ。
なんて…どこで張り合ってんだろうな。こんなこと考えたって、言ったって、未桜の気持ちは手に入らない。
「…うん、美味しい」
パエリア、か。難しそうだな。作ろうと思ったこともない。
やっぱり黒崎は自分のためじゃなくて未桜のために料理を毎日作ってるんだな。
この味、黒崎の目で未桜への愛がどれだけなのかを思い知らされる。
でも、本当に美味しい。あっという間に食べれるなぁ。
「ごちそうさま」
「早いですね!涼ちゃんのご飯美味しかったからですよね?…ほんとに涼ちゃんはすごいな~。私も料理上手く作れるようになりたい‥」