想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 そして今に至り、私は凱斗さんのマンションの広々としたリビングで、オットマンつきのソファに寝そべって、一人で大画面で映画を観ている。

 引っ越しの日こそわざわざ休みと取って、荷解きを手伝ってくれたものの、私と凱斗さんの生活は見事にすれ違った。

 勤務日も時間もバラバラな私達が、家で顔を合わせることは滅多になく、結婚したという実感は、はっきり言って薄い。


「青柳さん」
「えっ、あ、はい!」

 ドリンクサービスを終えたギャレーで話しかけて来たのは、昨年結婚したばかりだという先輩CAだ。

 結婚を機に仕事でも青柳姓を名乗ることにしたけれど、まだまだ慣れなくて、呼ばれるたび心臓が跳ねる。

「青柳さんとこも新婚なのにすれ違いばっかりで寂しいでしょ」

 先輩の旦那さまは同業者ではなく一般企業に勤めているらしい。

 元々出張の多い仕事で家を空けることが多いようで、家で一緒に過ごせるのはひと月でも片手で足りるほどだという。

 CAとパイロットの夫婦である私達も似たようなものだ。いや、もっとひどいかも。


「そうですね、寂しいです」