想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 会社へ結婚の報告も済ませ、私が凱斗さんの家へ引っ越す形で、新婚生活はスタートした。

 同居することには、初めかなり抵抗があった。実際、抵抗した。

「早く一緒に暮らしたいってあれ、凱斗さんのリップサービスですよね?」
「前にも言ったろ。俺は本気で思ったことしか言わない」

 娘は愛されて結婚するんだって、うちの両親を安心させるために言ったんじゃないの?

「あの……、本当に一緒に住む必要あります?」
「当たり前だろ。籍も入れてるのに別々に住んでるなんて、会社になんて言うつもりだ」

 なんとか同居を阻止しようとする私に、凱斗さんが呆れ顔で言う。

 私と凱斗さんの結婚は周囲に十分広まったと思う。

 凱斗さんにライバル心でも燃やしたのか、やたらと私にしつこくしてきた桐島さんもあれっきりだ。

 それなのに、一緒に住むまでしなくてもいいのではないかと言う私の主張は、あっさり凱斗さんに説き伏せられた。

「ベースも同じなのに別居婚だなんてバレてみろ。勝手に不仲にされて、以前の生活に逆戻りだ」

 確かに、夫婦の綻びが見つかれば、そこにつけ込もうとする人も出てくるかもしれない。

「それに、お互いの実家にも不自然に思われるだろ」

 それは、確かにそう。母のことだから、そのうち新居を見に来たいなんて言いかねない。

 「実は一緒には住んでいませんでした」なんて言ったら、私よりも凱斗さんの立場が悪くなる。

「わかりました……」