想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「青柳さんの『いい考え』ってこれですか?」

「だってそうだろう。君は同じ会社の俺と結婚すれば、見合いもしなくていいし、将来的に会社を辞めて福岡に帰る必要もなくなる。俺はこれ以上うるさい思いをしなくてすむ」

「でも、結婚していても気にせずアタックする人もいるかもしれませんよ?」

「そんなやつは軽蔑の対象でしかないが、既婚者であることはより強い牽制になる。とりあえず、上司のいらん世話はなくなるだろう」

 ちょうどスープが届き、お互い口をつぐむ。

 私はようやく前菜に手をつけ初め、スープを飲む青柳さんをチラリと盗み見た。

 多くの女性を魅了する、端正な顔立ち。

 見惚れてしまうほど洗練された立ち居振る舞い。

 上司の覚えもめでたく、数いるコーパイの中で最もキャプテンに近い人だと言われてもいる。


 ……青柳さんほど、結婚相手として母を納得させられる人はいないんじゃない? 


「いやいやいやいや」

 流されそうになっている自分に気づいて、慌てて首を振る。

「やっぱりダメですよ、嘘つくなんて。それに、青柳さんは相手が私で本当にいいんですか? いつか本当に好きな人ができたらどうするんです?」