想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 それは困る。あんなに何言っても納得しない人を今後も相手にするのは、やっかいでしかない。

 私はまだ一口も手につけていないのに、青柳さんの皿はもう空になっている。

 こんな時によく食べられるな、と半ば呆れながら尋ねる。

「それで、どうされるおつもりなんですか?」
「どうって」

 カトラリーを置くと、青柳さんは口角を上げた。

「さっき言った通りだよ。このまま、君と俺は将来を誓い合った婚約者同士ということにする」
「無理です」
「困った時は助けてくれるって言っただろ」

 確かに言ったけど、こんなの話が違う!

「第一、そんな嘘すぐにばれるに決まってます」

 ほんの二ヶ月前まで、私たちは会話を交わしたことすらなかったのだ。

 会社の人たちはともかく、周囲の親しい人たちが信じるとは思えない。

「そんなに心配なら、バレる前に結婚してしまえばいい」
「本気ですか?」
「心外だな。こんなこと本気でなければ言わない」

 そんなにムッとした顔されても困る。

 『婚約者』発言だけでもびっくりなのに、本当に結婚しようだなんて滅茶苦茶だ。