想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 オーダーは青柳さんに任せてしばらくすると、スパークリングワインと炭酸水が運ばれて来た。続けてカラフルなソースのかかった前菜も届く。

「乾杯でもしとくか?」

 どこか楽し気な青柳さんをじろりと睨む。

 正直に言うと、ずっと困惑していて乾杯なんてする気分じゃない。

 だからと言ってここで断るのも大人げないと思い、言われるままグラスを合わせた。

 口当たりは軽いけれど、度数はしっかりとありそうなスパークリングワインが喉を焼く。


「桐島さんが、悪いことをした」

 どうして青柳さんが謝るのだろう。

「昔から、なぜか目の敵にされてるんだ。君と俺の噂を聞きつけて、それでちょっかいを出しにいったんだろう」

 職種も部署も違う二人なのになぜ? 聞いてみたけれど、青柳さんも理由はわからないらしい。

 目立つ人だから、それだけで反感を買うこともあるのかもしれない。そういうところは、本当に気の毒だと思う。

「あの噂、青柳さんの耳にも届いてたんですね」
「今日も解散になった途端、同じチームのCAに君とつきあってるのかって聞かれたよ」
「なんて答えたんですか」
「別になにも」

 それって、沈黙は肯定と捉えられても仕方ないのでは?

「はっきり否定してくれればよかったのに」
「結果的にそうしない方がよかっただろ。婚約者が口から出まかせだったってばれたら、また桐島さんに絡まれるぞ」