想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 さっきから、ため息が止まらない。今日は、本当に散々な一日だった。

 本来なら、欠員からのアサインもなく、夕方にはスタンバイを終えて、すんなり帰宅できるはずだった。

 それなのに、なぜかスタンバイ中から広報の桐島さんに絡まれ、客室乗務部では私と青柳さんがつきあっているなんて噂を流され、挙句の果てに、青柳さんの口から飛び出した婚約者宣言。

きっと今頃、社内では青柳さんの新たなゴシップでもちきりだ。


二人して客室乗務部を飛び出したあと、青柳さんから車で拾ってもらい、誰にも会わないよう急いで空港を出た。


「三崎さん明日は勤務?」
「明日は午後出で福岡日帰りです」
「そうか。よかったら、食事しながら話さないか」
「……わかりました」

 青柳さんに連れて来られたのは、住宅街にある小さなレストランだった。どうやら彼の行きつけらしい。

 オーナーらしき女性と少し話した後、ぼつぼつとテーブルが埋まり始めているホールを抜けて、四方を壁と大きな窓に仕切られた、個室のような場所に案内された。


「苦手なものは?」
「苦手なものもアレルギーも特にはありません」
「俺は車だから飲めないけど、君はどうする?」
「……いただきます」

 自分だけ飲むのもどうかなと思ったけれど、お酒でも入れて景気をつけないと、青柳さんに太刀打ちできる気がしない。