想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 乗務終わりに、同じ便のクルーの一人に聞かれて驚いた。

 俺から聞かずとも、そのCAが『社内の噂』とやらをぺらぺら話して聞かせてくれる。

 俺は否定も肯定もせず、そのおしゃべりなCAに一瞥をくれると、オフィスへと戻ることにした。
 相手にするだけ無駄だ。


「青柳と三崎さんがつきあってるんじゃないかって、客室乗務部で噂になってるよ」

 オフィスに戻って俺の目に飛び込んできたのは、三崎さんに詰め寄る桐島さんの姿だった。

 あろうことか、彼女の手首を掴んでいる。頭にカッと血が上るのがわかった。

「離れてください」

 三崎さんと桐島さんの間に割って入る。三崎さんが微かに震えているのに気づき、怒りに震える。

「そうですね。確かに俺達はそういう関係ではない」

 自分でも、どうしてこんなことを口走ったのかわからない。


「彼女は俺の婚約者です」


 嘘でもなんでもいい、とにかく彼女のことを守りたかった。

 三崎さんに触れる桐島さんのことが心から不快だったし、自分以外の誰も、彼女に近づかせたくない。

 突然襲ってきた感情に、自分でも驚く。


 ああそうか。これが独占欲というやつだ。

 自覚したよ、新庄。


 そうか俺は、彼女のことが好きなんだ。