想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 俺の場合、フライト中に客室と直接やりとりをする時の相手は、先任客室乗務員が多かった。

 若手と話す機会なんて、ステイ中に仲間に誘われて食事に出た時くらいじゃないだろうか。それでも挨拶程度だ。

「一人のCAと仕事で何度も一緒になることなんてそうそうないだろ。覚えていられるわけがない」
「じゃあどうして三崎さんのことは覚えてるんだよ」
「どうしてって……」

 彼女の発言が心に残ったからとしか言いようがない。

「お前がなんと言おうと、彼女のことはそういうんじゃない」

 俺は仕事以外にかまけている暇はないんだ。変なことを言って心を乱すのはやめてほしい。

「わかったわかった。そういうことにしておいてやるよ」
「なにがわかったのか知らんが、お前ももうブリーフィング始まるんだろ。早く行くぞ」
「はいはい」

 にやにやと嫌らしい笑みを浮かべる新庄を急かして、キャプテンを迎える準備に取り掛かった。


 久しぶりのシカゴ線。フライトプランに目を通していると、一人のクルーの名前が目に入った。

 三崎蒼羽。

 一緒に乗務するのは初めてだ。新庄とあんな話をしたばかりだからか、なんとなく落ち着かない気分になる。