今まで知らなかったのが嘘みたいに、一度認識すると彼女の姿をよく目にするようになった。
フライト前のオフィスで、乗務を終えた後の空港内の通路で、昼食を買いに出たコンビニで。
気がつくと、視界の端に彼女がいる。
彼女のフルネームが『三崎蒼羽』というのも、いつの間にか耳に入っていた。
「それはさ、青柳が三崎さんのこと気になってるってことじゃないの?」
そんなことを言い出したのは、同期パイロットの新庄朝陽だ。
「なに馬鹿なこと言ってるんだ。話したこともない相手だぞ」
頭のいい新庄が突拍子もないことを言い出すものだから呆れてしまう。
「じゃあ聞くけどさ、青柳って何人くらいのCAのこと認識してる?」
「CA?」
咄嗟に浮かんだのは、ファーストフライトで世話になった、今は管理職としてバックオフィスにいる蓮見さんと、数名のチーフパーサだ。
「先輩方ばっかりじゃん」
「仕事で話すのって、結局はそのクラスの人ばっかりだろ」


