想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「麻衣も聞いたことはあるでしょ? 青柳さんのストーカー被害」

 まさかとは思ったが、やはり俺の話をしていた。どうやら先ほどの告白シーンを見られていたらしい。

 どうせ悪口だろうと、気づかれる前に立ち去ろうとした時だった。

「女性に優しい言葉をかけて、下手に期待を持たせるよりいいって思ってるんじゃない?」

 自分の耳を疑った。俺の態度を、彼女のように受け取ってくれた人は初めてだ。

「蒼羽ったら優しいんだから。いい風に受け取りすぎ。青柳さんが冷たいのはそういう性格なんだよ!」

 対してもう一人の方は、ばっさりと切り捨てた。

 ショック、と言うほどでもないが、あれが普通の反応だろうと自分を納得させる。

 彼女たちはそのまま駅の方へ向かって歩いていった。


「そういう風に考えてくれる人もいるんだな」

 見覚えのないCAだった。
 もちろんフライトで一緒になったこともない。

 友人に『あおば』と呼ばれていたが、それが彼女の名前なんだろうか。
 
 暗かった気持ちが、少しだけ浮上したようだった。彼女の名前だけ胸に刻んで、その場を後にした。