想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 後ろから伸びてきた手が、桐島さんの手を乱暴に払いのける。

 ハッとして振り返ると、フライトから戻ったばかりなのか、制服姿の青柳さんが桐嶋さんのことを厳しい表情で睨みつけていた。


「桐島さん、彼女嫌がってるじゃないですか」
「そう怖い顔するなよ。これは、部署間交流の一環だよ」

 悪びれる様子もない桐島さんに、青柳さんは眉間の皺を深くしている。

「なんだ、ヤキモチか? おまえは三崎さんに相手にされてないみたいだもんな」

 なんてこと言うの桐島さん!

「……どういう意味です?」

 二人の間で青くなっていると、青柳さんがさらに声を低くした。

「一緒に帰ってたって、噂になってるぞ。つき合ってんのかと思ったら、三崎さんはそういう関係じゃないって言うし」
「そうですね。確かに俺達はそういう関係ではない」
「なら……」


「ただ、正確に言うと『それだけの関係じゃない』ですね」


 青柳さん、なにを言おうとしているの? 頭にはてなを浮かべて突っ立っている私を青柳さんが引き寄せる。


「彼女は俺の婚約者です」
「なっ……」

 私の声は、周囲のどよめきにかき消された。