想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 そんなの誤解もいいところだ。ちゃんと否定しないと、青柳さんにも迷惑がかかってしまう。

 業務中のオフィスは人がいっぱいで、会話が聞こえているのか、すでに注目を集めてしまっている。

「私と青柳さんはそんなんじゃありません」
「俺、青柳と大学一緒だから昔から知ってるんだけど、あいつが女性と、ましてやCAと噂になるなんてこれまで一度もなかったよ」
「そうなんですか。でも、私とも違います」

 毅然と言い放ったつもりなのに、桐島さんはまだ疑っているのか、私の顔を覗き込んでくる。

「違うって、まだつき合ってはないってこと? あいつでも、女性相手に手こずることがあるんだな」

 ダメだ。何を言っても通じない。頭を抱えそうになっていると、桐島さんがまた身を寄せて来た。無意識に避けようと後退した私の腕を掴む。

「でもさ、だったら食事会に来てくれてもいいんじゃない? 都合が悪いなら別日でもいいし」

 掴まれた腕が痛いし、そう親しくもない人に触れられているのが正直言って怖い。

「ちょっと、桐島さん離して……」

 震える声でなんとか腕を引き抜こうとしていると、突然背後に人の気配を感じた。


「離れてください」