想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「なんでこんなに勝手なことばっかりするんだろ……」

 深いため息を吐いて、その場で項垂れた。

 しかも最悪なことに、母からの電話に出ている間に、タクシーは一台もいなくなってしまった。

 仕方がない。やはりタクシーは諦めて、電車で帰ることにしよう。駅に向かって歩き出そうとした時だった。

「三崎さん」
「……青柳さん、お疲れさまです」

 いつの間にか、私の後ろには青柳さんが立っていた。

 彼の顔を見るのは、前回シカゴ線で一緒になった時以来。約二ヶ月ぶりだ。

 なんだか気まずそうな青柳さんの顔を見て察してしまう。


「ひょっとして、聞こえてました?」
「ああ、聞くつもりはなかったんだが、聞こえてきたというか……。悪い」

 スマホ越しでも聞こえてしまうくらい、母の声が大きいのがいけないのだ。以前も近くにいた麻衣に話の内容が丸聞こえだった。

「なんというか、君も大変そうだな」
「4連勤明けなんですが、今ので疲れが倍増しました」


 今から重いスーツケースを引っ張って、電車に乗って帰るだなんて想像したくもない。

「よかったら送ろうか。俺、今日は車で来てるんだ。本当はタクシーで帰るつもりだったんだろう?」