想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

『そういえば、見合いのことだけど』
「見合い? その話は私、断ったはずだけど……」
『なのに言ってるの。こっちからお願いしたのに断れるはずないじゃない!』

 こっちからお願いした?

「お母さんこそ何言ってるの? 初耳なんだけど!」

 母は確か『高橋さんの紹介で』と言ったはずだ。それが、どうして『こちらから頼んだ』ことになってるのだろう。

『蒼羽がいつまでもうだうだ言って帰ってこないから、お母さんが高橋さんにお願いしたのよ。ちゃんと言ったでしょ?』
「そんなこと聞いてない!」

 母の頭には、都合の悪い記憶を自分の都合のいいように変換する機能でもついてるんだろうか。母と話すたび、話がどんどん悪い方に進んでしまう。

「お母さん、この間も言ったけど、私は仕事が楽しいの。今はまだ、結婚なんて考えらないから」

『そんな寂しいこと言わないで。それにあんまりこういうこと言いたくはないけど、女性にはタイムリミットってものがあるのよ』

 ダメだ。仕事の疲れも相まって、これ以上穏やかな気持ちで母と話すなんてできそうにない。

 「また連絡するから」と言って母をなんとかなだめ、その場は電話を終えた。