想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「かなり緊張してしまって、キャプテンが見ていないところで喝を入れられたな」

 青柳さんでも緊張することがあるのか。今の堂々とした姿からは想像できない。

「三崎さん、俺が緊張するなんて信じられないって顔してるな」
「そっ、そんなことありません」

 恥ずかしい。そんなに考えていることが顔に出ていたんだろうか。プライベートの時間だからって、青柳さん相手に気を抜きすぎだ。

 彼のくすくす笑いを背中に聞きながら、心持ち速足で歩く。すると、急に視界が開けて、目の前に青が広がった。

「うわぁ……」

 これが、シャガールの『アメリカの窓』。

 壁一面に貼られた三枚の美しく深い青のステンドグラスには、思い思いに芸術を楽しむ人々の姿が描かれていて、いつまでも見ていたいと思ってしまう。

「三崎さん」

 青柳さんに声をかけられて、我に返った。

「そろそろいこうか。もうすぐ閉館の時間だよ」

 えっ、そんなに? 

 一枚一枚、描かれているものを丁寧に見ているうちに、ずいぶん長い時間をステンドグラスの前で過ごしていたみたいだ。
 
 それくらい魅入られていた。


「もっと早くに声をかけてくださってもよかったのに」