想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 チケットを購入して正面の階段を上り、まずは二階にある『印象派』のフロアを目指す。

「三崎さん、これ」

 青柳さんが手渡してくれたのは、日本語で書かれたパンフレットだった。

「館内のマップは英語版にしか載ってないんだ。英語版の方は俺が持っておくから、必要な時は言って」
「ありがとうございます」

 いくつも抱えて歩くと邪魔になるから、英語版の方は引き受けてくれたのだろう。

 青柳さんから、コックピットでも感じた思いやりを感じて、驚いてしまう。

「よくご存じですね」
「ここへは何度か来ているからね」

 今までも、一緒に来た人にそういう気遣いを見せていたのだろうな。なんだか想像できてしまう。

「三崎さんの目的はシャガールだけ?」

「……実は私、そこまで詳しいわけではなくて。シャガールも蓮見さんから聞いて見てみたいなって思っただけなんです」

「そうなんだ」

 そう言って、青柳さんがくすりと笑う。

「失礼。蓮見さんがぜひにと誘うから、君のことを熱心な美術ファンかと思っていたんだ」