想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「いい笑顔ね、三崎さん。そのまま、お客様をお迎えしましょう」
「はい!」

 入社して数年経ち、それなりに経験を積んでパーサーとなった今でも、蓮見さんと一緒になるとCAを目指していた頃の初心を思い出す。

 気持ちを引き締めて、私はお客様を迎えるため、姿勢を正した。


 順調に離陸し、ベルトチェックのサインが消えた。

 水平飛行に移れば、すぐにドリンクサービスが始まる。ギャレーで準備をしていると、コックピットからの連絡のランプが着いた。

「はい、三崎です」

 こちらが名乗っても、返事がない。

「あの……」
「失礼、コーパイの青柳です。お忙しいところすみません。ホットコーヒーを一つお願いできませんか」

 何事かと思ったら、ドリンクの催促だった。トラブルではないことにとりあえずホッとする。

「わかりました。お一つでよろしいですか?」
「ええ。頼みます」

 一言答えると、コールはぷつりと切れた。

 青柳さんの口から、クルーを気遣うような言葉が出たことに少し驚いた。そういうことを口に出すイメージはなかったのだ。

「コーヒーでしょ」

 サービスの準備のため忙しなく手を動かしながら、蓮見さんが尋ねる。