想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「皆さんお揃いでしょうか。本日AJ119便を担当します荻野(おぎの)キャプテンと、副操縦士の青柳です。よろしくお願いします」


 お客様をご案内する直前の、まだがらんとした機内に低く落ち着いた声が響き渡る。

 担当機の出発前に、機長や副操縦士そして客室乗務員が一緒に行うブリーフィング。

 搭乗する機体の保安に関する情報や当日の飛行ルート、天気や揺れの予報などを共有し、乗務員一丸となってお客様にご満足いただけるフライトを目指す。

 勢ぞろいした乗務員の中央、キャプテンの隣で進行を務めるのは、青柳副操縦士だ。


「本日の天気は良好。上がって五分ほどでベルトサインの解除を出すと思います」

 真剣な眼差しで手元の運行情報を確認しながら、青柳さんが乗務員全員に語りかけている。

 うんうんと真面目に頷く素ぶりを見せながらも、新人CAが青柳さんに見とれているのがわかる。

 この人は見た目だけじゃなく、声もいいのだな、と改めて思う。神様はいくつのラッキーを彼に与えているのだろう。


 青柳さんの話では、今回のフライトは特に懸念事項はなさそうだ。

 だからと言って安心はできない。どんなトラブルが起きようと冷静に対処できるよう、改めて気を引き締める。

「ではよろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」