想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 そのまま見守っていると、非常用口が空いて、脱出スライドが下りて来た。

 混乱している様子はなく、次々に乗客が滑り降りてくる。

 エンジンからの出火は、広がる前に消防車が消してくれた。
 
 しばらくして、乗員乗客全員脱出に成功し、けが人も出さずにすんだとの報告を受けた。

「よかった……」
「青柳さん!」

 脱力して思わず座り込む私を、蓮見さんが抱える。

「申し訳ありません。力が抜けてしまって」
「無理もないわ。どこか掛けられるところに行きましょう」

 スタンバイの際に待機場所として使われている、休憩スペースまで、蓮見さんが連れて行ってくれた。

「貧血かしら。救護室で休む?」
「でもまだデブリーフィングが」
「体調不良なのよ。それは他のクルーに任せて」
「少し休めば大丈夫です。……5246便のクルーを、凱斗さんを出迎えたいので」

 蓮見さんが貸してくれていた手をきゅっと握る。私の顔色を見て問題ないと判断したのだろう。

「わかったわ。ただし、具合が悪くなったらすぐに呼ぶこと。いいわね」
「わかりました」

 デブリーフィングを終えた後も、このままオフィスにいることを許された。