想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 翌日、凱斗さんは早朝のフライトで、私が寝ている間に家を出ていた。

 いつもなら遠慮がちに私の部屋のドアをノックして、「いってきます」を言ってくれるのに。

「今日は声もかけてくれなかったな……」

 昨日の今日で、許してもらえるはずがないのだ。

 いつも通りの朝を望むなんて、なんて図々しいの、私。

 せめて仕事だけは、嘘偽りのない心からの笑顔で頑張ろう。

 気合を入れて、ベッドから飛び出した。


 一日のフライトを終えて、仲間とデブリーフィングのためにオフィスに入った時だった。

 なんだかいつもより騒がしい。

「なにかあったんですか?」

 先に入っていた、別のグループのCAに聞いてみる。

「私も詳しいことはわからないのですけど、着陸のために降下中だったAJA機のエンジンから出火したみたいで」

 エンジンからの出火? それは重大なインシデントだ。

 話を聞いたCA達が一斉に窓際へ駆け寄る。ここからは、滑走路が見える。

「あれかしら?」

 さっき状況を教えてくれたCAが上空を指さす。AJA機の片方のエンジンから出火しているのが見えた。

「どうも仁川からの便みたい。AJ5246便ですって」