想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「わかりませんか? 式なんて挙げたら、取り返しがつかなくなりますよってことです」

「……それは、蒼羽は俺との結婚を続ける気がないってこと?」

 それは違う。私はできることならあなたの側にいたい。

 でも、本当のことを言えば、一緒にはいられなくなる。
 
 私は、どうしたらいいの。

 追い詰められたように感じて、涙が勝手にあふれてくる。

 凱斗さんに見られたくなくて、顔を伏せた。

「蒼羽」

 頭上から、凱斗さんの苦し気な声がした。

「……ひょっとして、好きな人ができたのか?」
「えっ……」

 気づかれた? 咄嗟に顔を上げると、そこにはなぜか傷ついたような表情の凱斗さんがいた。

 当たり前だ。「凱斗さんのことは好きにならない」と言って結婚したのに、私はその約束を破ったのだから。

 私は、彼の信頼を裏切った。


「蒼羽?」

 逃げ出そうとした私の両腕を、凱斗さんが掴む。

「私……、ごめんなさい」

 自分の本当の気持ちを口走って、別れを決定的にしてしまうのが怖くて、私は彼の手を振り切って、自分の部屋へと逃げ込んだ。