想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 自分にも厳しいんだろうけれど、他人にも厳しい。凱斗さんのことは、冷たい人だと思っていた。
 でも、そうじゃなかった。
 
 凱斗さんの本当の姿を知った今、不思議に思って聞いてみたことがある。

「凱斗さんはどうして、告白してくる女性達にあんなに冷たい態度を取っていたんですか?」
「……そういえば、蒼羽には何度も見られてたんだったな」

 ちょっとだけ気まずそうな顔をして、凱斗さんが答えた。

「気持ちに応えるつもりもないのに、中途半場に優しいのはいけないと思ったんだ。嫌われてでも冷たい態度を取ってきっぱり断った方が、彼女らも早く次の恋に目を向けられるだろう」

 つまり女性達を思って、敢えての行動だったということだ。

 凱斗さんらしい、一見そうとはわからない不器用な優しさだなと思う。


「そういうところも好きなんだよなぁ……」
「なにひとりごとでものろけてんのよ」

 乗務員用のレターボックスの前でため息をついていると、いきなり肩を叩かれた。

「ま、麻衣!」

 まさか声に出てるとは思わなかった。真っ赤になる私を見てニヤニヤしている。

「お疲れ、蒼羽。もう手首は大丈夫なの?」
「もうすっかり。ありがとう心配してくれて」
「青柳さんはちゃんと蒼羽のこと見てくれた?」
「それは、うん。しっかり見てもらった」
「それならよかった」