想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「青柳さんは怪我を治すことに集中して。余計なことを考えないこと」

 落ち込んでいるのが見て取れたのだろう。別れ際に、この便のチーフパーサからも言われてしまった。


 片手でどうにか着替えを終え、会社の入り口へと向かう。外へ出ると、見覚えのある背の高い後姿が見えた。

「凱斗さん……」
「連絡、待ってたんだけど?」
「あ!」

 シップを降りてからも治療や報告でバタバタしていて、凱斗さんに連絡を入れることをすっかり忘れていた。

「ごめんなさい。でも、どうして?」
「客室乗務部から連絡をもらったんだ。機内で怪我したんだって?」

 包帯でぐるぐる巻きにされた左手首を見て、眉をしかめる。

「痛む?」
「少しだけ。……でも大丈夫です」
「本当に?」

 窺うように見つめられて、つい目を逸らしてしまう。

「本当は結構痛いです」

 心配かけたくなかったのに、あっさり見破られて情けなくなる。

「やっぱり。蒼羽は嘘が下手だな」

 ふわりと笑われて、脱力してしまった。