想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 私がそう返事をすると、ようやく笑顔になる。

「帰り、気をつけてくださいね」
「蒼羽も」

 お互い笑って、手を振って別れた。


 今日のラストフライトは伊丹羽田線。

 毎回満席近い予約をいただくAJAの主要幹線でもあるこの路線は、年間搭乗率九十パーセントを越える。

 今日は夏休み終盤ということもあってか、キャンセル待ちが出るほどだった。
 
 混雑していた割に大きな混乱もなく、飛行機は無事に羽田に着地した。

 ホッとしたのもつかの間、コックピットからのオールコールのインターフォンが鳴った。
 
 今になって何かトラブル?
 
 一瞬ひやっとしたけれど、別の飛行機の移動待ちで一度飛行機を停止するとの連絡だった。

 トラブルではなかったことに安心して、視線を元に戻して驚いた。

 一人のお客様が、飛行機が完全に停止したと勘違いし、立ち上がったのだ。

「お客様、当機はまだ駐機場に入っておりません。座席にお掛けください!」

 すぐに呼びかけたが、一人が立ち上がったことで、少し離れた後方席の方から、次々にシートベルトを外す音が聞こえてくる。