想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「いえ、でも本当にいるんですね。ああいう、積極的な人……」

 凱斗さんによると、彼女は「結婚していようと、同僚と食事に行くくらいいいのではないか」と言ったそうだ。
 「そんなことも許さないなんて、妻として器が小さい」とも。

 自分が逆の立場になっても、同じように考えることができるのかなと驚いてしまう。

「不愉快にさせたなら申し訳ない」
「えっ、そんなこと。それに私には……」

 大変な目に遭ったのは凱斗さんの方なのに、まさか謝られるなんて思ってなかった。

 だって、そうでしょう? みんなが知らないだけで、私には本当は、凱斗さんに女性が言い寄ってきたからって、怒る資格なんてないもの。


「大丈夫ですよ。気になさらないでください。あ、でも凱斗さんって演技も上手ですよね。聞いていて、本当に愛されて結婚したんじゃないかって勘違いしそうになりました。一緒にいたチーフも感動しちゃってて」

「…………そうか」

「え?」

 他にも何か言った気がするけれど、ちょうどお風呂のアナウンスが流れて聞こえなかった。

「凱斗さん、なにか言いました?」

「いや。……君は本当に思い通りにならない人だな」

「え、どういう意味ですか?」

 話が急に飛んでしまって、わからない。

「風呂湧いたな。先に使わせてもらうよ」
「どうぞ……」

 凱斗さんの返事を待ったけれど、彼は何も返さずお風呂へ行ってしまった。