想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

「初めてなんですか?」

「言ったろ。俺の担当は焼き場だったんだ」

「どうして今日はポトフを?」

「この時間に肉はきついだろ。ちょっとでも、胃に優しい料理の方がいいかと思って」

 私のことを考えて、得意料理でもなければ作ったこともない、煮込み料理にチャレンジしてくれたんだ。

 そんなことを聞くと、体だけじゃなく心まで温かくなる。

「あと、調べたら初心者でも失敗しにくい料理って出て来て……」

 正直すぎて笑ってしまう。

「すっごく美味しいです。ありがとうございます」

 ちゃんと見ると、根菜は一つ一つ丁寧に面取りしてある。鶏の骨つき肉はほろほろと口の中で解れる。

 豪快さと丁寧さが混在したポトフは、初めて作ったなんて思えないほど美味しい。

「蒼羽が買った鍋、借りたんだ。あれいいな。俺料理にハマりそう……」

「どんどん使ってください! 凱斗さん、絶対料理のセンスありますよ」

「おかわりもあるから。二杯目はサワークリームを落としてみようかと思ってる」

「ええ……、これ以上誘惑しないでください。でも食べたい……」

 あまりに美味しくて、こんな遅い時間なのに、言われるままにおかわりしてしまいそうで怖い。