想いはいつか、本物になる。〜契約結婚脱出までの私たちの365日〜

 世間では夏休みに入り、帰省や旅行のお客様も増え、いつもにも増して忙しい日々を送っている。

 今日乗務するのは韓国・仁川空港便。行きは満席だと聞いている。そのままとんぼ返りする復路便も満席に近い。

 AJAでは、国際線は出発時刻のだいたい二時間前くらいに出社するよう定められている。

 繁忙期ということもあって、私は心持ち早めに出社した。


「三崎さん、じゃなくて青柳さんになったんだったわね。早いのね」
「先月の上海便以来ですね、香川チーフ。本日はよろしくお願いいたします」

 今日乗務する便のチーフパーサーを務める香川さんと、オフィスの入り口でばったり会った。

 AJAでは、客室乗務員同士で班を組み、月二回程度、班のメンバーでの乗務がある。私と香川チーフは、今年は同じ東アジア担当だ。

「先月の上海は大変だったわね」
「なんとか収まったのはチーフのおかげです。ありがとうございました」

 機材繰りの関係で出発が遅れ、海外のお客様から機内でクレームが発生した。

 香川チーフの適切かつ丁寧な対応と堪能な中国語のおかげで、なんとか収めてもらえたのだ。

「チーフに連れて行っていただいたレストラン、とてもよかったです! 同期にも勧めたら、感動してました」