・
・【08 団子八本目:夏休み(2)、事件事件】
・
スマホで今日のニュースを見ると、ナッツ類の収穫不足により、ナッツ類が高騰しているらしい。
俺はナッツがそこそこ好きなので、それは困ったなぁ、と思っている。
それはそうとナッツがいっぱい入っているシリアルでも食べようかなと思いつつ、朝の準備を終えて、一階に降りると普通に征喜がイスに座っていた。静かに麦茶を飲んでいた。
いや、
「馴染むな、あの頃よりも馴染むな」
「一心同体でございます」
と言って俺に頭をさげた征喜。
俺はツッコむように、
「丁寧に言うな、丁寧に言うって何なんだよ」
すると征喜はバンザイしてから、
「じゃあ元気に言う! キムチからのラブコールがボクにありました! 地球三個分というね!」
「地球三個分という表現は川澄奈穂選手にラブコールを送った上尾野辺めぐ選手なんだよな、俺はオマエに地球三個分とは言っていない、ハナクソ三切れも言っていない」
征喜は何かウキウキしながら、
「ボクとのヤノダンゴ探偵のこと欲しているくせにぃ、キラーパスし過ぎぃ」
俺は溜息交じりに、
「ツンデレをキラーパスと表現するな、いやツンデレじゃないんだよ、俺にデレは無いんだよ」
征喜は即座に、
「楔のパス」
「もう用語を言っているだけじゃん、何だよ。毎日毎日、郵便ポストに手紙が無い日も普通にいてさぁ」
と俺が少々呆れながらそう言うと、征喜がコップを持っていなかったほうの手をサッと出すと、そこには手紙があった。
俺はすかさず、
「今日はあるんだよなぁ、じゃぁないんだよ。というかそのなんだ、俺への重要な手紙の可能性だってあるわけじゃん。だから勝手に読むなよ」
征喜は首を優しく横に振って、
「まだ勝手に読んでいないよ、ミスリードになってしまう可能性があるからね」
俺は矢継ぎ早に、
「ミスリードの使い方多分違うんだよな、まあいいや、じゃあ俺読むよ」
と征喜から手紙を受け取って、俺は読み始めた。
うん、これ、依頼の手紙だ、全然告白の類じゃないや。まあそうだろうけども。俺モテないし。
モテない上に、こんなアホな幼馴染と走り回っていたら、そりゃ誰も近寄って来ないわ。
俺は手紙の内容を要約することにした。
「何かさ、やたらと小さな事件が起きる町があるんだってさ。それが不自然だから調べてほしいって」
と言ってから、手紙を征喜に渡そうとしたその時だった。
手紙からポロリと何かがこぼれてきた。
何だろうと思って、それを見ると、なんとクオカードだったのだ!
征喜はクオカードを持って叫んだ。
「何これ! 依頼料っ? 正式な契約! A契約だ!」
俺はツッコむように、
「いや新人サッカー選手がプロとしての契約をついに締結したじゃぁないんだよ。いやでも今回の場所さ、電車で行かないとダメなところなんだよな。だからそのための移動費じゃない?」
征喜は目を見開きながら、
「でもクオカードって! 納税しなきゃダメなんじゃないのっ?」
俺はう~んと唸ってから、
「確か一年間で五十万までなら大丈夫らしいから大丈夫だろ」
「ボクたちのヤノダンゴ探偵……ついにプロへ……」
そうジーンって感じに感極まっている征喜。
いやクオカードまで入っているって怪し過ぎるだろ。
とは言え、クオカードまで入っている以上、これはもう解決に行かないとダメだろ。
でも実際、解決したとて、それをどう依頼主に伝えるんだ?
依頼主も近くにいるということかな? 同じ町の住民というか。
でもそれなら何でまた差出人不明なんだ? こんな差出人不明が被ることってあるのか?
ということはこの手紙を書いて送っている人は全員同じ人? でも字体というか、字の感じがいつも違うんだよなぁ、誰なんだろう、この差出人って。
と、もっともっと考えていたいけども、征喜はすぐに俺の腕を引っ張って、駅へ向かって走り出し、電車に乗って、目的地に着いた。
電車に乗っている最中、今回はずっと征喜がサッカーの話をしてきて、まあ飽きなかったから良かったけども、差出人の話もしたかったんだよなぁ、本当は。
もう時期を逸脱したから、そういう話はしないけども、やっぱり征喜が自作自演で手紙をポストに入れているのか? 字の筆跡をあえて変えてさ。
征喜は大きくジャンプしてから、
「ここだぁ!」
いや、
「コーナーキックからの攻撃じゃないんだよ、意味無く大ジャンプすな」
すると征喜は実況のような流暢な喋りで、
「ヤノダンゴ探偵の叩きつけるようなヘディング! キーパーの足元で跳ねて取れず! 決まったぁ! 14―1!」
俺はツッコむように、
「何で柏vs京都のJ2最終節スコアなんだよ。そんな実況もどうでもいいし」
征喜は間髪入れずに、
「オルガ探偵」
「ヤノダンゴだろ、オルガは柏の選手で、その試合の時に6ゴールした選手の名前だろ。ヤノダンゴだから、いやヤノダンゴって何だよ?」
そんな会話をしながら、町中を適当に歩き出したその時だった。
「ちょっとすみません、力仕事の人手が今ちょっと足りなくて、手伝ってくれませんか?」
と駄菓子屋をやっているお店の人から店頭で話し掛けられた。
すると征喜は即座に、
「やりますよ! パワー系のフッキー系選手だから!」
俺はツッコむように、
「元ブラジル代表のフッキーじゃぁないんだよ、系を二つ重ねるな」
お店の人は案の定、少し困惑しながらも、
「それではこの上にある段ボールをここに移動してもらえますか? 今こっちをおさえているので」
征喜はニコニコしながら手を伸ばして、
「神の手」
と言いながら段ボールを持って移動した。
別にキーパーでいいだろと思いつつ、俺は征喜のことを見ていた。
征喜は無事に段ボールを移すと、お店の人は嬉しそうに、
「有難うございます! お礼にこのお菓子、あげます!」
と言って十円ガムを二個ずつ、俺と征喜にくれた。
征喜は嬉しそうに早速噛み始めた。
俺はとりあえずポケットに入れてから、
「じゃあせっかくもらったし、ちょっとくらい駄菓子をここで買っていくか」
と俺が言うと、征喜が楽しそうに、
「駄菓子大好き!」
と言って、それから俺と征喜は駄菓子をかさばらない程度に買ってお店から出て行った。
征喜はニコニコしながら、
「良いことをしたあとは気持ちが良いなぁ! それか快便!」
「あんまハッキリと快便って言うな、元気に言えばOKな語句とかじゃないから」
そんな会話をしていると、血相を変えた人がこっちへ向かって走ってきて、何だろうと思っていると、
「すいません! ちょっと! 水道管が何かなりまして! 抑えるの手伝ってもらっていいですか!」
「行きます!」
征喜はすぐさまそう言って、その人のあとをついていった。
するとその人はイタリアン料理のお店へ入って行ったので、俺と征喜もそのあとに続いた。
着くと、水道管から緩く水が漏れていて、
「お二人さん! ここ抑えていてください! その間に私が直しますので!」
と言われたんだけども、こんなとこ抑えても何かなるのかな? という場所で、俺は半信半疑で抑えていたんだけども、征喜はもう使命感に燃えているって感じで、必死の形相で抑えていた。
すると水道管から緩く漏れていた水が止まり、店員の人が、
「助かりました! 有難うございます! この恩はどうしたらいいでしょうか!」
と言って頭をさげてきたので、まあそんな言われると悪い気はしないかと思っていると、店員の人がこう言った。
「そうだ! 今日は貴方たち二人だけ特別に30%オフで料理を提供します! ジェラートとかもありますので、どうぞ!」
それに征喜が目を¥のマークにしながら、
「いや! パスタ! パスタ食べよう! ボクお腹減った!」
そう言って口からガムを出して、持参していたポケットティッシュで包み、ポケットの中に戻そうとすると、店員の人がそのティッシュを受け取って、お店のゴミ箱に捨ててくれた。
「あっ、すみません、どうもっ」
と素の反応をした征喜が何だか可笑しかった。
俺と征喜は席に着いて、征喜はパスタ、俺はパフェを頼んだ。
征喜はどんなパスタかな、どんなパスタかなと、写真がメニューに載っていたのにそんなことを言っていて、うるさいなぁ、と思った……ことともう一つ、これが依頼人の言っていた小さな事件が多いということか?
ちょっと征喜にも言うか。
「征喜、もしかすると小さな事件が起きるってこのことかもしれないぞ?」
征喜は小首を傾げながら、
「このこと……」
と言って唸ってから、
「あっ! 今の水道管のことってことっ? でもお任せあれだったから!」
俺は相槌を打つように、
「オマエも水道管のアレに対してはお任せあれと思うんだ、いやそうじゃなくて」
という俺の言葉を遮って征喜が、
「うん、分かってる、小さな事件かぁ、確かにそうだよねぇ」
と会話をしていると、お店の扉が開いて、女子高生のような人が入ってきて、ジェラートを頼み、俺らの近くの席に座った。
いやこの人は多分関係無いとして、小さな事件についてだ。
そもそもあの駄菓子屋の段ボールも何か変だったような。一人で作業ができそうな段ボールの移動だったような。
あれ単体だと違和感を抱かなかったかもしれないけど、こうやって同じように話し掛けられて行動を起こして、ってなると気になってきた。
そのことも征喜に伝えると、
「でも偶然みたいな感じもありえるんじゃないか、偶然の勝利はあるけど、偶然の負けは無いって言うし」
俺はツッコむように、
「それはスポーツ全体の名言な。いやでもそんなあるか?」
征喜はう~んと唸ってから、
「それより誰かが小さな事件を仕組みまくっているんじゃないか?」
俺はさっきよりも小声で、
「何のために? そんなイタズラ小人がいるみたいなこと言われてもなぁ」
と溜息をつくと、征喜は少しムッとしてから、
「じゃあキムチの理路整然としたところ見せてよ」
何その言い方と思いつつも、俺は喋り出した。
「そもそも征喜は普通に商店街歩いていて手伝ってくれとか言われたことある? 探偵の依頼以外で、だぞ?」
「まあ無いなぁ」
「それが二回連続でこの町に来てからあるって何か変じゃないか?」
「じゃあどういうこと?」
俺は店員の人に聞こえないように、さらに小声でこう言った。
「わざと、劇場型にしているってことだよ」
すると近くにいた女子高生のような人もこっちに耳を傾けてきているような気がする。
人の話を盗み聞きしてくる人っているよなぁ、でもまあ別にいいか、ここはもうハッキリ言わないといけないことだし、と、今度は店員の人に聞こえてもいいという声量で、
「つまり嘘の騒動を起こして、劇場型にして巻き込んで、助けてもらったお礼に、と言って客を引き込んでいるんだよ」
そう言ってすぐに店員の人のほうを見ると、明らかに顔が引きつっていた。
図星って感じだ。
すると征喜がこう言った。
「そんな、でも30%オフになったら損じゃないのっ?」
「だから元々30%オフが元の価格なんだって」
すると征喜が大きな声で、目の前の女子高生のような人を指差しながら、こう言った。
「じゃあこの人! 普通の価格でジェラート買ってるから損じゃん!」
いや……さすがにそんなことデカい声で言うなよ……と、ちょっとヒいちゃっていると、その女子高生のような人が甲高い声でこう言った。
「えっ、じゃあ何か、調べますか……? スマホで……?」
と言ってきたので、じゃあもうそれに乗じてそうしてもらおうかなと思って俺は図々しいながらも、
「じゃあ食べログとか、グーグルマップとかで、価格の確認してもらっていいですかね」
とその女子高生のような人に言うと、征喜は小首を傾げながら、
「普通お店のホームページじゃないのか?」
と言ったので、俺は答えることにした。
「いや前の価格はそれだと分からないだろ。前の価格は前の価格のことを書いていそうな昔の食べログのレポとかのほうなんだ」
「えっとぉ、じゃあ早速見てみますねぇ」
と、その女子高生のような人が調べ始めたところで、店員の人がこっちに近付いてきて、頭をさげながらこう言った。
「このことは内密にお願いします! 貴方のジェラートも30%オフにするので! お二人さんのメニューは50%オフにしますし!」
俺は深呼吸してから、
「やっぱりそうだったんですね。嫌です、このことは大々的に言います。これ結構悪質ですよ。町全体でこんなことしているって」
店員の人はあせあせしながら、
「いやでもこういうことすると観光客の心にも残って楽しいかなって、しています……」
俺は毅然とした態度で、
「いいえ、これは詐欺です! 俺があの手この手で周知させます!」
と言うと征喜は立ち上がって、
「そうだ! 詐欺は良くない! A契約じゃないのにプロだと嘘を言って夜遊びするサッカー選手! 反対!」
俺は語気を強めて、
「いやサッカー選手のあるあるじゃぁないんだよ! 町の話! この町ダメ絶対!」
すると店員の人がこう言った。
「じゃあタダにします! タダにするから言わないでください!」
そう言った店員の人に女子高生のような人は「えっ……」と言って、ヒいていた。
いやもう俺もそんな気持ちだ。
俺はハッキリと店員の人の目を見ながら、
「言いますからね、パフェもパスタも結構です。お金払うんでさようなら」
そう言って俺は征喜の分のお金もテーブルに置いて、征喜の腕を引っ張って出て行った。
女子高生のような人も食べかけのジェラートは持って、店から出て行った。
今回の件はまあ周知させることにしたから依頼人にも伝わるだろうな。
・【08 団子八本目:夏休み(2)、事件事件】
・
スマホで今日のニュースを見ると、ナッツ類の収穫不足により、ナッツ類が高騰しているらしい。
俺はナッツがそこそこ好きなので、それは困ったなぁ、と思っている。
それはそうとナッツがいっぱい入っているシリアルでも食べようかなと思いつつ、朝の準備を終えて、一階に降りると普通に征喜がイスに座っていた。静かに麦茶を飲んでいた。
いや、
「馴染むな、あの頃よりも馴染むな」
「一心同体でございます」
と言って俺に頭をさげた征喜。
俺はツッコむように、
「丁寧に言うな、丁寧に言うって何なんだよ」
すると征喜はバンザイしてから、
「じゃあ元気に言う! キムチからのラブコールがボクにありました! 地球三個分というね!」
「地球三個分という表現は川澄奈穂選手にラブコールを送った上尾野辺めぐ選手なんだよな、俺はオマエに地球三個分とは言っていない、ハナクソ三切れも言っていない」
征喜は何かウキウキしながら、
「ボクとのヤノダンゴ探偵のこと欲しているくせにぃ、キラーパスし過ぎぃ」
俺は溜息交じりに、
「ツンデレをキラーパスと表現するな、いやツンデレじゃないんだよ、俺にデレは無いんだよ」
征喜は即座に、
「楔のパス」
「もう用語を言っているだけじゃん、何だよ。毎日毎日、郵便ポストに手紙が無い日も普通にいてさぁ」
と俺が少々呆れながらそう言うと、征喜がコップを持っていなかったほうの手をサッと出すと、そこには手紙があった。
俺はすかさず、
「今日はあるんだよなぁ、じゃぁないんだよ。というかそのなんだ、俺への重要な手紙の可能性だってあるわけじゃん。だから勝手に読むなよ」
征喜は首を優しく横に振って、
「まだ勝手に読んでいないよ、ミスリードになってしまう可能性があるからね」
俺は矢継ぎ早に、
「ミスリードの使い方多分違うんだよな、まあいいや、じゃあ俺読むよ」
と征喜から手紙を受け取って、俺は読み始めた。
うん、これ、依頼の手紙だ、全然告白の類じゃないや。まあそうだろうけども。俺モテないし。
モテない上に、こんなアホな幼馴染と走り回っていたら、そりゃ誰も近寄って来ないわ。
俺は手紙の内容を要約することにした。
「何かさ、やたらと小さな事件が起きる町があるんだってさ。それが不自然だから調べてほしいって」
と言ってから、手紙を征喜に渡そうとしたその時だった。
手紙からポロリと何かがこぼれてきた。
何だろうと思って、それを見ると、なんとクオカードだったのだ!
征喜はクオカードを持って叫んだ。
「何これ! 依頼料っ? 正式な契約! A契約だ!」
俺はツッコむように、
「いや新人サッカー選手がプロとしての契約をついに締結したじゃぁないんだよ。いやでも今回の場所さ、電車で行かないとダメなところなんだよな。だからそのための移動費じゃない?」
征喜は目を見開きながら、
「でもクオカードって! 納税しなきゃダメなんじゃないのっ?」
俺はう~んと唸ってから、
「確か一年間で五十万までなら大丈夫らしいから大丈夫だろ」
「ボクたちのヤノダンゴ探偵……ついにプロへ……」
そうジーンって感じに感極まっている征喜。
いやクオカードまで入っているって怪し過ぎるだろ。
とは言え、クオカードまで入っている以上、これはもう解決に行かないとダメだろ。
でも実際、解決したとて、それをどう依頼主に伝えるんだ?
依頼主も近くにいるということかな? 同じ町の住民というか。
でもそれなら何でまた差出人不明なんだ? こんな差出人不明が被ることってあるのか?
ということはこの手紙を書いて送っている人は全員同じ人? でも字体というか、字の感じがいつも違うんだよなぁ、誰なんだろう、この差出人って。
と、もっともっと考えていたいけども、征喜はすぐに俺の腕を引っ張って、駅へ向かって走り出し、電車に乗って、目的地に着いた。
電車に乗っている最中、今回はずっと征喜がサッカーの話をしてきて、まあ飽きなかったから良かったけども、差出人の話もしたかったんだよなぁ、本当は。
もう時期を逸脱したから、そういう話はしないけども、やっぱり征喜が自作自演で手紙をポストに入れているのか? 字の筆跡をあえて変えてさ。
征喜は大きくジャンプしてから、
「ここだぁ!」
いや、
「コーナーキックからの攻撃じゃないんだよ、意味無く大ジャンプすな」
すると征喜は実況のような流暢な喋りで、
「ヤノダンゴ探偵の叩きつけるようなヘディング! キーパーの足元で跳ねて取れず! 決まったぁ! 14―1!」
俺はツッコむように、
「何で柏vs京都のJ2最終節スコアなんだよ。そんな実況もどうでもいいし」
征喜は間髪入れずに、
「オルガ探偵」
「ヤノダンゴだろ、オルガは柏の選手で、その試合の時に6ゴールした選手の名前だろ。ヤノダンゴだから、いやヤノダンゴって何だよ?」
そんな会話をしながら、町中を適当に歩き出したその時だった。
「ちょっとすみません、力仕事の人手が今ちょっと足りなくて、手伝ってくれませんか?」
と駄菓子屋をやっているお店の人から店頭で話し掛けられた。
すると征喜は即座に、
「やりますよ! パワー系のフッキー系選手だから!」
俺はツッコむように、
「元ブラジル代表のフッキーじゃぁないんだよ、系を二つ重ねるな」
お店の人は案の定、少し困惑しながらも、
「それではこの上にある段ボールをここに移動してもらえますか? 今こっちをおさえているので」
征喜はニコニコしながら手を伸ばして、
「神の手」
と言いながら段ボールを持って移動した。
別にキーパーでいいだろと思いつつ、俺は征喜のことを見ていた。
征喜は無事に段ボールを移すと、お店の人は嬉しそうに、
「有難うございます! お礼にこのお菓子、あげます!」
と言って十円ガムを二個ずつ、俺と征喜にくれた。
征喜は嬉しそうに早速噛み始めた。
俺はとりあえずポケットに入れてから、
「じゃあせっかくもらったし、ちょっとくらい駄菓子をここで買っていくか」
と俺が言うと、征喜が楽しそうに、
「駄菓子大好き!」
と言って、それから俺と征喜は駄菓子をかさばらない程度に買ってお店から出て行った。
征喜はニコニコしながら、
「良いことをしたあとは気持ちが良いなぁ! それか快便!」
「あんまハッキリと快便って言うな、元気に言えばOKな語句とかじゃないから」
そんな会話をしていると、血相を変えた人がこっちへ向かって走ってきて、何だろうと思っていると、
「すいません! ちょっと! 水道管が何かなりまして! 抑えるの手伝ってもらっていいですか!」
「行きます!」
征喜はすぐさまそう言って、その人のあとをついていった。
するとその人はイタリアン料理のお店へ入って行ったので、俺と征喜もそのあとに続いた。
着くと、水道管から緩く水が漏れていて、
「お二人さん! ここ抑えていてください! その間に私が直しますので!」
と言われたんだけども、こんなとこ抑えても何かなるのかな? という場所で、俺は半信半疑で抑えていたんだけども、征喜はもう使命感に燃えているって感じで、必死の形相で抑えていた。
すると水道管から緩く漏れていた水が止まり、店員の人が、
「助かりました! 有難うございます! この恩はどうしたらいいでしょうか!」
と言って頭をさげてきたので、まあそんな言われると悪い気はしないかと思っていると、店員の人がこう言った。
「そうだ! 今日は貴方たち二人だけ特別に30%オフで料理を提供します! ジェラートとかもありますので、どうぞ!」
それに征喜が目を¥のマークにしながら、
「いや! パスタ! パスタ食べよう! ボクお腹減った!」
そう言って口からガムを出して、持参していたポケットティッシュで包み、ポケットの中に戻そうとすると、店員の人がそのティッシュを受け取って、お店のゴミ箱に捨ててくれた。
「あっ、すみません、どうもっ」
と素の反応をした征喜が何だか可笑しかった。
俺と征喜は席に着いて、征喜はパスタ、俺はパフェを頼んだ。
征喜はどんなパスタかな、どんなパスタかなと、写真がメニューに載っていたのにそんなことを言っていて、うるさいなぁ、と思った……ことともう一つ、これが依頼人の言っていた小さな事件が多いということか?
ちょっと征喜にも言うか。
「征喜、もしかすると小さな事件が起きるってこのことかもしれないぞ?」
征喜は小首を傾げながら、
「このこと……」
と言って唸ってから、
「あっ! 今の水道管のことってことっ? でもお任せあれだったから!」
俺は相槌を打つように、
「オマエも水道管のアレに対してはお任せあれと思うんだ、いやそうじゃなくて」
という俺の言葉を遮って征喜が、
「うん、分かってる、小さな事件かぁ、確かにそうだよねぇ」
と会話をしていると、お店の扉が開いて、女子高生のような人が入ってきて、ジェラートを頼み、俺らの近くの席に座った。
いやこの人は多分関係無いとして、小さな事件についてだ。
そもそもあの駄菓子屋の段ボールも何か変だったような。一人で作業ができそうな段ボールの移動だったような。
あれ単体だと違和感を抱かなかったかもしれないけど、こうやって同じように話し掛けられて行動を起こして、ってなると気になってきた。
そのことも征喜に伝えると、
「でも偶然みたいな感じもありえるんじゃないか、偶然の勝利はあるけど、偶然の負けは無いって言うし」
俺はツッコむように、
「それはスポーツ全体の名言な。いやでもそんなあるか?」
征喜はう~んと唸ってから、
「それより誰かが小さな事件を仕組みまくっているんじゃないか?」
俺はさっきよりも小声で、
「何のために? そんなイタズラ小人がいるみたいなこと言われてもなぁ」
と溜息をつくと、征喜は少しムッとしてから、
「じゃあキムチの理路整然としたところ見せてよ」
何その言い方と思いつつも、俺は喋り出した。
「そもそも征喜は普通に商店街歩いていて手伝ってくれとか言われたことある? 探偵の依頼以外で、だぞ?」
「まあ無いなぁ」
「それが二回連続でこの町に来てからあるって何か変じゃないか?」
「じゃあどういうこと?」
俺は店員の人に聞こえないように、さらに小声でこう言った。
「わざと、劇場型にしているってことだよ」
すると近くにいた女子高生のような人もこっちに耳を傾けてきているような気がする。
人の話を盗み聞きしてくる人っているよなぁ、でもまあ別にいいか、ここはもうハッキリ言わないといけないことだし、と、今度は店員の人に聞こえてもいいという声量で、
「つまり嘘の騒動を起こして、劇場型にして巻き込んで、助けてもらったお礼に、と言って客を引き込んでいるんだよ」
そう言ってすぐに店員の人のほうを見ると、明らかに顔が引きつっていた。
図星って感じだ。
すると征喜がこう言った。
「そんな、でも30%オフになったら損じゃないのっ?」
「だから元々30%オフが元の価格なんだって」
すると征喜が大きな声で、目の前の女子高生のような人を指差しながら、こう言った。
「じゃあこの人! 普通の価格でジェラート買ってるから損じゃん!」
いや……さすがにそんなことデカい声で言うなよ……と、ちょっとヒいちゃっていると、その女子高生のような人が甲高い声でこう言った。
「えっ、じゃあ何か、調べますか……? スマホで……?」
と言ってきたので、じゃあもうそれに乗じてそうしてもらおうかなと思って俺は図々しいながらも、
「じゃあ食べログとか、グーグルマップとかで、価格の確認してもらっていいですかね」
とその女子高生のような人に言うと、征喜は小首を傾げながら、
「普通お店のホームページじゃないのか?」
と言ったので、俺は答えることにした。
「いや前の価格はそれだと分からないだろ。前の価格は前の価格のことを書いていそうな昔の食べログのレポとかのほうなんだ」
「えっとぉ、じゃあ早速見てみますねぇ」
と、その女子高生のような人が調べ始めたところで、店員の人がこっちに近付いてきて、頭をさげながらこう言った。
「このことは内密にお願いします! 貴方のジェラートも30%オフにするので! お二人さんのメニューは50%オフにしますし!」
俺は深呼吸してから、
「やっぱりそうだったんですね。嫌です、このことは大々的に言います。これ結構悪質ですよ。町全体でこんなことしているって」
店員の人はあせあせしながら、
「いやでもこういうことすると観光客の心にも残って楽しいかなって、しています……」
俺は毅然とした態度で、
「いいえ、これは詐欺です! 俺があの手この手で周知させます!」
と言うと征喜は立ち上がって、
「そうだ! 詐欺は良くない! A契約じゃないのにプロだと嘘を言って夜遊びするサッカー選手! 反対!」
俺は語気を強めて、
「いやサッカー選手のあるあるじゃぁないんだよ! 町の話! この町ダメ絶対!」
すると店員の人がこう言った。
「じゃあタダにします! タダにするから言わないでください!」
そう言った店員の人に女子高生のような人は「えっ……」と言って、ヒいていた。
いやもう俺もそんな気持ちだ。
俺はハッキリと店員の人の目を見ながら、
「言いますからね、パフェもパスタも結構です。お金払うんでさようなら」
そう言って俺は征喜の分のお金もテーブルに置いて、征喜の腕を引っ張って出て行った。
女子高生のような人も食べかけのジェラートは持って、店から出て行った。
今回の件はまあ周知させることにしたから依頼人にも伝わるだろうな。



