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・【03 団子三本目:六月第四週、食リポ事件】
・
俺は部活をやっていない。
家でテレビゲームをしていたいからだ。
テレビゲームというかニンテンドースイッチ2だけども。俺は任天堂派。
許されるなら、携帯ゲームとして学校へ所持したいと思っている。まあ盗まれるだろうけども。
放課後になったし、今日も家へ直帰して、例の最新作でもやるかと思っていると、征喜が俺の前に立ちはだかった。
いやここでボクの仁王立ちをご覧ください、じゃぁないんだよ。
オマエ、俺より身長の高い175cmあるから圧迫感があるんだよ。
征喜は拳を天にかざしながら、
「キムチ! 事件が入った! ダイレクトで繋ぐぞ!」
僕は呆れるように、
「いや探偵をサッカーで例えられても分からないんだよ、両方そこまでなんだよ。探偵もサッカーもそんな知らないんだよ」
征喜は力強く、
「ワンタッチより早く、一気に敵陣に侵入だぁ!」
「敵陣に行くの?」
という質問の答えは特にもらえず、俺は征喜に腕を引っ張られるがまま、町内の商店街へ行った。
地方の商店街にしては活気が溢れているほうだと思う。
人もそこそこいるし、なんといっても小学生が走り回っている。
子供のいる町というのは栄えていくものだからなぁ、と何かジジイみたいなことを思いながら歩いていると、征喜が、
「このお店だ! 一気にペナルティエリアに入ってクロスに合わせてヘディングだ!」
俺は溜息交じりに、
「いやボランチの攻撃参加みたいなこと言われても」
「何だ、キムチはサッカーのことよく知っているじゃないか」
と征喜はそう感心するように頷いた。
まあ俺は昔から部活やクラブ活動のようなモノはやっていなかったし、ずっと征喜の試合の応援を小学生の時からやっていたしな。
一時期は征喜の専属マネージャーとか言われて、うっすらイジられたこともあった。でもまあ征喜のカリスマ性で一蹴したけども。
俺は優しく首を横に振りながら、
「まあサッカーの話はどうでもいいんだ、じゃあこのお店の中に入ろう」
「攻撃の時は敵陣深く侵入する……リベロ!」
そう言いながらお店の中に入っていった征喜。
いや依頼主なんでしょ? 依頼主は味方だろ、敵陣じゃないだろ。
店内は小奇麗なカフェといった感じで、木のぬくもりが感じられる落ち着いた感じだ。
変な、鹿の角のオブジェとかは全然無い。
店員の一人が近付いてきて、こう言った。
「ヤノダンゴ探偵さん! よろしくお願いします!」
うっ、こんな大人の女性もヤノダンゴ探偵という言葉を発するんだ。ちょっとだけ幻滅だなぁ……初めて会った人だけども。
「まずこちらのテーブルについてください。改めてヤノダンゴ探偵さんと助手さんにお話をします」
店員さんに促された席は四人座れるテーブル席で、二人なのになぁ、と思った。
そう言えば、この店、こんな良い感じの雰囲気なのにお客さん少ないな、とは思った。というか今は誰もいない。
こんなに商店街内に人が溢れているんだから、いてもいいような気がするけども。
そんなことを考えていると、カフェの扉が開いたので、そっちのほうをなんとなく見ると俺はビックリしてしまった。
「えっ! キムチくん! 征喜くん! こんなところで何をしているのっ?」
エリーちゃんだ!
いや!
「エリーちゃんこそどうしたのっ?」
と俺がまるでツッコミのようなテンションで叫んでしまうと、エリーちゃんは少し慌てた様子で、
「えっと! 私はこのカフェで台本読みでもしようかなと思って!」
台本読み……ダメだ、俳優過ぎて住む世界が違う。
征喜は席から立ち上がって、
「台本読みというとドラマかっ? でもサッカーは台本の無いドラマ!」
と言ったので、すぐさま俺は、
「サッカーの魅力を伝えなくていいんだよ」
とツッコんでおくと、エリーちゃんは、
「えっ、サッカーはそうかもしれないけどもっ、台本のあるドラマも面白いですっ!」
と張り合うように言って、何か可愛いなぁと思ってしまった。
いやまあエリーちゃんとの会話はいいとして(楽しいけども)、
「それでは店員さん、事件の内容をお願いします」
征喜はまた座って、エリーちゃんは窓際の席に移動した。
店員さんは神妙な面持ちになってから喋り出した。
「最近声の大きい食リポの二人組がやって来るの。それがもう謎過ぎて……」
征喜はすかさず、
「食リポってつまり『チーズとトマト、これほど合う食材って無いよな、他だと何がそれぐらい合うと思う?』『それはもう三苫薫と守田英正のフロンターレ・ラインくらいだな』ってヤツか」
俺はすかさず、
「いや何でちょっと特殊なパターンである、コンビ芸人の食リポを例に出したんだよ。一人二役の時、ちょっと声を変えるところがもはや腹立つわ」
店員さんは優しく頷きながら、
「でもそうなんです。二人組なんでそんな感じなんです」
俺はちょっと「えっ」と声を出してから、
「こんなこと言うんですか?」
店員さんはちょっと落ち込んだように、
「それの酷い版です……」
と俯いた。
俺はつまり、といった感じに、
「酷評していくというわけですか。でもそれならもう二度と来ませんよね」
店員さんは溜息をついてから、
「それが何度も何度もやって来るんです。それが意味不明で怖いんです」
「具体的にどういうことを言ってくるんですか?」
「安いから来るが、いつ来ても不味い! 話にならない! とか……」
すると征喜が、
「でもこのお店、別に安くないよなぁ!」
とデカい声でめっちゃ失礼なことを言った。
そんなこと言うなよ。でもまあ分からないでもない。
カフェに並べられている、木製の札で書かれたお洒落な字体でのメニューはそんな安くは無い。まあ普通か。
店員さんは自信の無さそうな声で、
「私たちも格安がウリでもないので、何が何だか分からず……」
大声で酷評の食リポをする二人組が何度も来る、ということはもうこれしかないだろう。
征喜が最初に言っていた通りだったのかもしれないな、敵陣に侵入するって、な。
俺は一呼吸置いてから、
「大体分かりました。その二人組の目的が」
征喜と店員さんは目を丸くして驚いている。
俺は続ける。
「その二人組はきっと他のお店からの刺客ですよ。このお店の評判を落とすためにやって来ているんだと思います。だから大きな声で食リポして印象を悪くしているんです」
と俺が言ったその時だった。
カフェの扉が開き、ガラの悪い二人組の男性が入ってきた。
ガニ股で我が物顔で歩き、無言でテーブル席に座ると、すぐさま声を上げた。
「お冷持ってこいや! いっつも遅いな! ここは!」
「本当マジでどうしようもねぇ店だな! 安いから来てやってるけどなぁ!」
なんとちょうどやって来たのだ。
そうか、俺と征喜と、そして窓際にエリーちゃんがいる状況だったから、客がいるということでやって来たわけか。
でも来るまでのレスポンスの早さから察するに、この商店街内にこの二人組を送ってきているヤツらがいるということだろ。
なので、俺はすぐさま征喜へ、
「用事思い出したからちょっと行ってくるわ。戻ってくると思う」
と言って立ち上がり、お店から出て行こうとすると、征喜が、
「ちょっと! 解決編だぞ!」
と言ってきたので、
「ヤノダンゴ探偵に任せるよ、ヒーローインタビューはオマエに決まりだ」
と俺は答えると、征喜は満足げに笑ってから、
「用事頑張って来いよ!」
俺は手を振って応えながら、外に出た。
さて、征喜ならきっとこの勢いのまま、あの二人組に詰め寄るだろう。でも証拠はナシ。逃げ切られると思う。
だけども、ばつが悪くなった二人組はカフェからすぐ出てくるだろうから、それを俺は尾行して尻尾を掴んでやる。
案の定、征喜は席を立って、あの二人組のところへ行って、何か喋っているようだ。
征喜は身振り手振りでめっちゃ声を張っている感じがする。
二人組の男性は困った表情をして、最後は立ち上がり、カフェから出てきた。
俺はその二人組にはバレないように尾行開始。
俺の予想ならこの商店街内の本拠地に一旦戻って、作戦がバレたことを伝えるはず。
案の定、その二人組は商店街内の、別の喫茶店の中へ入っていった。
窓の外から確認し、その二人組がその喫茶店の店員と話しているところを確認してから、俺も中に入る。
開口一番こう言うことにした。
「このお店が首謀者だったんですね、あのカフェの客足を減らすために変な食リポをしていたなんて犯罪ですよ」
喫茶店の店員もあの二人組も目が飛び出るほど驚きながら、
「んな! そんな食リポで悪口喚き散らすなんてやっていない!」
俺は即座に、
「いや俺まだそんなこと言っていないですけども。変なまでしか言っていないので、悪口とまでは断定していないですけども」
と言いながら、ポケットからスマホを取り出して、
「あのカフェを出てからこの喫茶店に入るまでのところも映像で保存していますよ」
と言うと、二人組の一人がこっちへ飛び掛かって来て、
「今すぐ消す!」
と声を荒らげたその時だった。
「えっとぉ、撮っちゃって良かったですよねぇ……」
後ろを振り返ると、そこにはエリーちゃんが立っていて、エリーちゃんが、二人組の一人に襲われている俺をスマホで撮っていた。
「えっ! じゃ私はこれで!」
そう言って走り去ったエリーちゃんにポカンとしている二人組。
俺も混乱に乗じて、といった感じに喫茶店から脱出した。
すると、すぐ外にエリーちゃんがいて、俺は矢継ぎ早に、
「エリーちゃん! 何でこんなところにいたのっ?」
と聞くと、エリーちゃんはすこしまごまごしながら、
「えっとぉ……台本読みの雰囲気変えたいなぁ、と思って、違う喫茶店へ行こうとしたらぁ……」
俺はなるほどと納得してから、
「そういうことだったのかぁ、でもありがとう。エリーちゃんのおかげで、相手にとってより良くない証拠が撮れたし、隙も作れたから逃げてこれたよ」
エリーちゃんは目を輝かせながら、
「え! じゃあ何か役に立ったんですかっ! 嬉しい!」
とりあえず征喜やあのカフェの店員に事の顛末を話すためにカフェに戻ることにしたんだけども、エリーちゃんも一緒に戻って、あれ? エリーちゃん、台本読みの雰囲気変えるために出てきたのでは? まあいいか。そもそも行こうと思った喫茶店で何か事件が起きていたんだから戻ってきて当たり前か。
一緒にカフェへ戻って、撮った動画やその音声を見聞きしてもらい、カフェの店員さんは納得している様子だった。ちょっと苦々しい面持ちもしていた。それは当然か。
まあ一件落着かなと思ったところで征喜が、
「じゃあどうやって客足を戻すかだなぁ」
と言ったところで、エリーちゃんがこう言った。
「えっと、じゃあこのカフェの一番自信のあるメニューをください。もし美味しかったら宣伝します。勿論、しょうもないインフルエンサーみたいにタダで食べさせてというわけじゃないです。ちゃんとお金払って食べますよ」
店員さんはやる気満々の瞳になり、
「よしっ! とびっきりのカレーを御馳走します!」
と言ったので、征喜が相槌を打つように、
「キャリアハイの」
と小声で言った。
いやサッカー選手がキャリアの中で一番成績が良かった期の言い方じゃぁないんだよ。
エリーちゃんが揚げ野菜のカレーを食べた結果はめっちゃ美味しかったらしく、SNSで宣伝してくれたみたいだ。
さらに同時にそういう食リポで酷評する二人組の話も乗っけたら、注意喚起としてバズって、より宣伝になったらしい。
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俺は部活をやっていない。
家でテレビゲームをしていたいからだ。
テレビゲームというかニンテンドースイッチ2だけども。俺は任天堂派。
許されるなら、携帯ゲームとして学校へ所持したいと思っている。まあ盗まれるだろうけども。
放課後になったし、今日も家へ直帰して、例の最新作でもやるかと思っていると、征喜が俺の前に立ちはだかった。
いやここでボクの仁王立ちをご覧ください、じゃぁないんだよ。
オマエ、俺より身長の高い175cmあるから圧迫感があるんだよ。
征喜は拳を天にかざしながら、
「キムチ! 事件が入った! ダイレクトで繋ぐぞ!」
僕は呆れるように、
「いや探偵をサッカーで例えられても分からないんだよ、両方そこまでなんだよ。探偵もサッカーもそんな知らないんだよ」
征喜は力強く、
「ワンタッチより早く、一気に敵陣に侵入だぁ!」
「敵陣に行くの?」
という質問の答えは特にもらえず、俺は征喜に腕を引っ張られるがまま、町内の商店街へ行った。
地方の商店街にしては活気が溢れているほうだと思う。
人もそこそこいるし、なんといっても小学生が走り回っている。
子供のいる町というのは栄えていくものだからなぁ、と何かジジイみたいなことを思いながら歩いていると、征喜が、
「このお店だ! 一気にペナルティエリアに入ってクロスに合わせてヘディングだ!」
俺は溜息交じりに、
「いやボランチの攻撃参加みたいなこと言われても」
「何だ、キムチはサッカーのことよく知っているじゃないか」
と征喜はそう感心するように頷いた。
まあ俺は昔から部活やクラブ活動のようなモノはやっていなかったし、ずっと征喜の試合の応援を小学生の時からやっていたしな。
一時期は征喜の専属マネージャーとか言われて、うっすらイジられたこともあった。でもまあ征喜のカリスマ性で一蹴したけども。
俺は優しく首を横に振りながら、
「まあサッカーの話はどうでもいいんだ、じゃあこのお店の中に入ろう」
「攻撃の時は敵陣深く侵入する……リベロ!」
そう言いながらお店の中に入っていった征喜。
いや依頼主なんでしょ? 依頼主は味方だろ、敵陣じゃないだろ。
店内は小奇麗なカフェといった感じで、木のぬくもりが感じられる落ち着いた感じだ。
変な、鹿の角のオブジェとかは全然無い。
店員の一人が近付いてきて、こう言った。
「ヤノダンゴ探偵さん! よろしくお願いします!」
うっ、こんな大人の女性もヤノダンゴ探偵という言葉を発するんだ。ちょっとだけ幻滅だなぁ……初めて会った人だけども。
「まずこちらのテーブルについてください。改めてヤノダンゴ探偵さんと助手さんにお話をします」
店員さんに促された席は四人座れるテーブル席で、二人なのになぁ、と思った。
そう言えば、この店、こんな良い感じの雰囲気なのにお客さん少ないな、とは思った。というか今は誰もいない。
こんなに商店街内に人が溢れているんだから、いてもいいような気がするけども。
そんなことを考えていると、カフェの扉が開いたので、そっちのほうをなんとなく見ると俺はビックリしてしまった。
「えっ! キムチくん! 征喜くん! こんなところで何をしているのっ?」
エリーちゃんだ!
いや!
「エリーちゃんこそどうしたのっ?」
と俺がまるでツッコミのようなテンションで叫んでしまうと、エリーちゃんは少し慌てた様子で、
「えっと! 私はこのカフェで台本読みでもしようかなと思って!」
台本読み……ダメだ、俳優過ぎて住む世界が違う。
征喜は席から立ち上がって、
「台本読みというとドラマかっ? でもサッカーは台本の無いドラマ!」
と言ったので、すぐさま俺は、
「サッカーの魅力を伝えなくていいんだよ」
とツッコんでおくと、エリーちゃんは、
「えっ、サッカーはそうかもしれないけどもっ、台本のあるドラマも面白いですっ!」
と張り合うように言って、何か可愛いなぁと思ってしまった。
いやまあエリーちゃんとの会話はいいとして(楽しいけども)、
「それでは店員さん、事件の内容をお願いします」
征喜はまた座って、エリーちゃんは窓際の席に移動した。
店員さんは神妙な面持ちになってから喋り出した。
「最近声の大きい食リポの二人組がやって来るの。それがもう謎過ぎて……」
征喜はすかさず、
「食リポってつまり『チーズとトマト、これほど合う食材って無いよな、他だと何がそれぐらい合うと思う?』『それはもう三苫薫と守田英正のフロンターレ・ラインくらいだな』ってヤツか」
俺はすかさず、
「いや何でちょっと特殊なパターンである、コンビ芸人の食リポを例に出したんだよ。一人二役の時、ちょっと声を変えるところがもはや腹立つわ」
店員さんは優しく頷きながら、
「でもそうなんです。二人組なんでそんな感じなんです」
俺はちょっと「えっ」と声を出してから、
「こんなこと言うんですか?」
店員さんはちょっと落ち込んだように、
「それの酷い版です……」
と俯いた。
俺はつまり、といった感じに、
「酷評していくというわけですか。でもそれならもう二度と来ませんよね」
店員さんは溜息をついてから、
「それが何度も何度もやって来るんです。それが意味不明で怖いんです」
「具体的にどういうことを言ってくるんですか?」
「安いから来るが、いつ来ても不味い! 話にならない! とか……」
すると征喜が、
「でもこのお店、別に安くないよなぁ!」
とデカい声でめっちゃ失礼なことを言った。
そんなこと言うなよ。でもまあ分からないでもない。
カフェに並べられている、木製の札で書かれたお洒落な字体でのメニューはそんな安くは無い。まあ普通か。
店員さんは自信の無さそうな声で、
「私たちも格安がウリでもないので、何が何だか分からず……」
大声で酷評の食リポをする二人組が何度も来る、ということはもうこれしかないだろう。
征喜が最初に言っていた通りだったのかもしれないな、敵陣に侵入するって、な。
俺は一呼吸置いてから、
「大体分かりました。その二人組の目的が」
征喜と店員さんは目を丸くして驚いている。
俺は続ける。
「その二人組はきっと他のお店からの刺客ですよ。このお店の評判を落とすためにやって来ているんだと思います。だから大きな声で食リポして印象を悪くしているんです」
と俺が言ったその時だった。
カフェの扉が開き、ガラの悪い二人組の男性が入ってきた。
ガニ股で我が物顔で歩き、無言でテーブル席に座ると、すぐさま声を上げた。
「お冷持ってこいや! いっつも遅いな! ここは!」
「本当マジでどうしようもねぇ店だな! 安いから来てやってるけどなぁ!」
なんとちょうどやって来たのだ。
そうか、俺と征喜と、そして窓際にエリーちゃんがいる状況だったから、客がいるということでやって来たわけか。
でも来るまでのレスポンスの早さから察するに、この商店街内にこの二人組を送ってきているヤツらがいるということだろ。
なので、俺はすぐさま征喜へ、
「用事思い出したからちょっと行ってくるわ。戻ってくると思う」
と言って立ち上がり、お店から出て行こうとすると、征喜が、
「ちょっと! 解決編だぞ!」
と言ってきたので、
「ヤノダンゴ探偵に任せるよ、ヒーローインタビューはオマエに決まりだ」
と俺は答えると、征喜は満足げに笑ってから、
「用事頑張って来いよ!」
俺は手を振って応えながら、外に出た。
さて、征喜ならきっとこの勢いのまま、あの二人組に詰め寄るだろう。でも証拠はナシ。逃げ切られると思う。
だけども、ばつが悪くなった二人組はカフェからすぐ出てくるだろうから、それを俺は尾行して尻尾を掴んでやる。
案の定、征喜は席を立って、あの二人組のところへ行って、何か喋っているようだ。
征喜は身振り手振りでめっちゃ声を張っている感じがする。
二人組の男性は困った表情をして、最後は立ち上がり、カフェから出てきた。
俺はその二人組にはバレないように尾行開始。
俺の予想ならこの商店街内の本拠地に一旦戻って、作戦がバレたことを伝えるはず。
案の定、その二人組は商店街内の、別の喫茶店の中へ入っていった。
窓の外から確認し、その二人組がその喫茶店の店員と話しているところを確認してから、俺も中に入る。
開口一番こう言うことにした。
「このお店が首謀者だったんですね、あのカフェの客足を減らすために変な食リポをしていたなんて犯罪ですよ」
喫茶店の店員もあの二人組も目が飛び出るほど驚きながら、
「んな! そんな食リポで悪口喚き散らすなんてやっていない!」
俺は即座に、
「いや俺まだそんなこと言っていないですけども。変なまでしか言っていないので、悪口とまでは断定していないですけども」
と言いながら、ポケットからスマホを取り出して、
「あのカフェを出てからこの喫茶店に入るまでのところも映像で保存していますよ」
と言うと、二人組の一人がこっちへ飛び掛かって来て、
「今すぐ消す!」
と声を荒らげたその時だった。
「えっとぉ、撮っちゃって良かったですよねぇ……」
後ろを振り返ると、そこにはエリーちゃんが立っていて、エリーちゃんが、二人組の一人に襲われている俺をスマホで撮っていた。
「えっ! じゃ私はこれで!」
そう言って走り去ったエリーちゃんにポカンとしている二人組。
俺も混乱に乗じて、といった感じに喫茶店から脱出した。
すると、すぐ外にエリーちゃんがいて、俺は矢継ぎ早に、
「エリーちゃん! 何でこんなところにいたのっ?」
と聞くと、エリーちゃんはすこしまごまごしながら、
「えっとぉ……台本読みの雰囲気変えたいなぁ、と思って、違う喫茶店へ行こうとしたらぁ……」
俺はなるほどと納得してから、
「そういうことだったのかぁ、でもありがとう。エリーちゃんのおかげで、相手にとってより良くない証拠が撮れたし、隙も作れたから逃げてこれたよ」
エリーちゃんは目を輝かせながら、
「え! じゃあ何か役に立ったんですかっ! 嬉しい!」
とりあえず征喜やあのカフェの店員に事の顛末を話すためにカフェに戻ることにしたんだけども、エリーちゃんも一緒に戻って、あれ? エリーちゃん、台本読みの雰囲気変えるために出てきたのでは? まあいいか。そもそも行こうと思った喫茶店で何か事件が起きていたんだから戻ってきて当たり前か。
一緒にカフェへ戻って、撮った動画やその音声を見聞きしてもらい、カフェの店員さんは納得している様子だった。ちょっと苦々しい面持ちもしていた。それは当然か。
まあ一件落着かなと思ったところで征喜が、
「じゃあどうやって客足を戻すかだなぁ」
と言ったところで、エリーちゃんがこう言った。
「えっと、じゃあこのカフェの一番自信のあるメニューをください。もし美味しかったら宣伝します。勿論、しょうもないインフルエンサーみたいにタダで食べさせてというわけじゃないです。ちゃんとお金払って食べますよ」
店員さんはやる気満々の瞳になり、
「よしっ! とびっきりのカレーを御馳走します!」
と言ったので、征喜が相槌を打つように、
「キャリアハイの」
と小声で言った。
いやサッカー選手がキャリアの中で一番成績が良かった期の言い方じゃぁないんだよ。
エリーちゃんが揚げ野菜のカレーを食べた結果はめっちゃ美味しかったらしく、SNSで宣伝してくれたみたいだ。
さらに同時にそういう食リポで酷評する二人組の話も乗っけたら、注意喚起としてバズって、より宣伝になったらしい。



