君の世界に入りたい

「ただいまー」

家に帰り、玄関を開けるとカレーのいい匂いが漂ってきた。学校が終わってから1時間近く経っているためすでにすごくお腹が空いていたけど、俺だけ早く食べるわけにもいかないため洗面所で手を洗い、自室に戻ろうと階段に足をかけたところで母さんに呼び止められた。

「もう少し大きな声でただいまって言いなさいよ〜お腹空いてない?クッキー焼いたのよ、どうせこれから本読むんでしょ?持って上がりなさい。あ!それとお弁当箱!出してよね?」

早口でたくさんのことを言われるとさすがに一度思考が停止してしまう。

お弁当箱…そう言えば給食じゃないからあるんだった。

「ごめん。今出すよ」
「も〜誰に似てこんなに静かなのかしら」

俺の父さんと母さんは割と社交的な人だと思う。明るくておおらか、こんな言葉がぴったりの2人。そんな2人から生まれたはずの俺は家だと返事程度の言葉しか発さないそんな人だ。

母さんの話を片耳で聞きながらクッキーを1つつまんで食べる。これは母さんがクッキーを焼いたときに必ずしているルーティンだ。

「クッキー美味しい。じゃあ上で勉強してるから」
「あ!またつまんだわね?!私が見てないうちに…!」

後ろから騒いでる母さんの声が聞こえていたけど、そんなのは気にせずに自室に入った。