君の世界に入りたい

昨日の帰り道、父さんの車に揺られていると1人で帰路につく渡会の姿を見た。別れ際少し挙動不審だったのは親が来ていないことを隠したかったからなのかとすぐに理解したけれど、この写真を見てもう1つ分かったことがある。

渡会も本当はあの綺麗な桜の木の下で写真を撮りたかったのだ。

俺を写していながらもあえてあの部分にピントを合わせるということは、思うことがあったからなのだろう。

「綺麗だ。とっても」

俺の口が開くのを静かに待っていた渡会に素直に感想を述べると頬を赤らめ目を潤わせていた。

「そうかな」
「うん、あえて遠くにピントを合わせているのすごくいいと思う」
「え!?あれ!そっち送っちゃってた!?ごめん!僕が送りたかったのはこっちで…」

そう言って焦りながら送られてきた写真は俺にピントが合わせられていて、俺を中心として構成された写真だった。これもまたこれで、とても綺麗だ。